課題から読み解く再エネ最大限導入への道

脱炭素とエネルギー安定確保を実現するために、主要国は再生可能エネルギーの最大限導入に向けて邁進している。とはいえ、大量の再エネを、早く安く手に入れるのは容易なことではない。日本の現状にも課題がある。最近公表された有識者のレポートの中から、いくつかの論点を紹介する。

 

開発加速にさらなる政策・投資が必要

日本の再エネ導入量について、年間増加率の長期低落傾向に着目したのは、日本エネルギー経済研究所の「2023年の内外再生可能エネルギー市場の展望と課題」だ。「世界的な再エネ導入加速とは逆のトレンド」と違いを印象づけ、「この水準の導入ペースが続くと2030年度の再エネ目標(発電量シェア36~38%)の達成は不確実」と記した。日本が低水準な理由を考察したうえで、レポートは「再エネ開発を加速化するためには追加的な政策が必要になる可能性もある」と説く。

政策立案者の前向きな取り組みが必要という意見は、海外でも同様だ。ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの「エネルギー移行の3要件」は、「2050年までにネットゼロを達成するためには、発電、エネルギーの効率化、再生可能燃料への移行および二酸化炭素の回収に対する年間投資額を約4兆米ドルへと大幅に増額する必要がある」という。

国際エネルギー機関(IEA)が公表した「Energy Technology Perspectives 2023」は、エネルギー技術の未来を展望する大部の報告書だ。太陽光発電や風力発電、蓄電池などの供給網が中国に集中していることに警鐘を鳴らす。一方で、クリーンエネルギーを生むためのインフラ構築に時間がかかることに言及し、大規模なインフラ事業の許可期間の短縮を呼びかける。

 

洋上風力発電の落札制限は是か非か

国内に目を向けたとき、次世代の再エネ発電の柱と期待されているのが洋上風力発電だ。2022年12月には4海域で、新たな公募占有指針に基づく事業者の公募が始まった。議論に時間をかけ、迅速性の評価や同一事業者による落札容量制限を盛り込んだ新指針だが、見直しを求める意見も寄せられている。

自然エネルギー財団は「洋上風力、新しい公募占用指針案の課題」の中で、「さまざまな評価項目が盛り込まれた結果、評価過程が非常に複雑となった」と指摘。運転開始時期については、民間事業者を競わせるのではなく、国が希望時期を入札条件として提示することを注文した。さらに、1GWの落札制限について、「評価の複雑化を避けるのみならず、日本国内に大きな市場を形成してコストダウンを進める上でも、また世界の中の日本市場に投資を呼び込むためにも、廃止すべきである」と主張する。

手段から脱炭素を捉えたレポートもある。みずほリサーチ&テクノロジーズは「これから「使える」再エネ」で、RE100に適合する国内の再エネ電力調達手法を整理している。RE100は、使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際企業連合だ。レポートはRE100の再エネ調達手段として、「オフサイトコーポレートPPAが台頭してくる」と示唆した。

 

PPP/PFIは脱炭素実現の有力な手段

みずほリサーチ&テクノロジーズのレポートでは、「脱炭素社会実現へ向けてのPPP/PFI手法の活用」にも目を通しておきたい。「公共事業において、PPP/PFIの仕組みをうまく活用することで、脱炭素化を一層推進することができると考える。事業対象そのものが再生可能エネルギーに係るインフラ整備等であればもちろんのこと、PPP/PFI事業全般で脱炭素化にシフトすることの社会的意義は大きい」との意見だ。

再エネ発電や蓄電の施設は、収益源になる有望なアセットである。開発の適地が少なくなる中で、公共施設や公共用地が再エネ発電や蓄電の重要な拠点になることは、InfraBizでも繰り返し伝えてきた。有識者の論説は、再エネ普及・拡大に、まだやることが残されていることを教えてくれる。

最後は、自然エネルギー財団の年頭コラム「国を誤るエネルギー政策に終止符を」から。2000年時点の自然エネルギーの割合は、日本がドイツや英国を上回っていたことを伝えたうえで、「この20年余にドイツも英国も、自然エネルギーの割合を40ポイントも増やしたのです。日本は震災後にFITを導入し拡大が始まりましたが、10ポイントしか増えていません」と述べる。さらに、「EUや米国の州政府・都市自治体が導入しつつある建築物への太陽光発電設置義務を、なぜ日本政府は導入しようとしないのでしょうか。洋上風力発電についても、国の政策は欧米、中国、台湾などよりスタートが遅れ、そのめざす目標はあまりに低いものです」と問題提起している。

InfraBiz
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