年間22.5万tの水素輸入で供給コスト30円/Nm3へ、川崎重工が描く2030年への行程

水素は、発電・産業・運輸部門などで幅広く活用されるカーボンニュートラルのキーテクノロジーであり、新たな資源と位置付けられている。「水素・燃料電池戦略ロードマップ〜水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン〜」(2019年3月)や「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(2021年6月)では、水素利用〔モビリティ、発電、産業、定置用燃料電池(FC)〕や水素サプライチェーン構築〔製造、輸送・貯蔵、CCS(CO2回収・貯留)〕に関して、下記の数値目標が設定されている。

  • 供給量:2030年に年間最大300万t、2050年に年間2000万t。
  • 供給コスト:2030年に30円/Nm3、2050年に化石燃料に対して十分な競争力を有する水準(20円/Nm3以下)。

これらの目標に対して、水素のリーディングカンパニーである川崎重工業は、2021年12月に公表したグループビジョン2030進捗報告会の資料「カーボンニュートラルへの挑戦-サステナビリティ社会に向けたKawasakiのソリューション-」の中で、同社の戦略を示している(図表1)。

水素利用を発電用、モビリティ用、工業用に大別し、2050年にかけては発電用が過半を占めるまでに伸びるという予想を前提に、2030年の年間300万tの供給実現には、化学プラントなどで副次的に発生する「副生水素」や、実用化まで技術的に時間がかかる水の電気分解(再エネ由来など)のほか、安価かつ大量に水素を供給するために当面、海外からのCO2フリー水素の導入がカギになるとしている。

年間300万tの水素供給量のうち、ENEOSホールディングスや岩谷産業とともに、豪州から国内に年間22.5万tの輸入を計画。これを全て発電用に回すとした場合、川崎重工は年間4.5tを自社の水素発電設備(100MW)に供給して、自社工場などでの消費を目指す。水素発電容量の100MWは、2030年の国の目標である1000MWの10分の1に相当する。

ただ、このソリューションモデルを採用できるのは現状、5社程度にとどまる。2030年時点で、仮に年間供給量300万tの3分の1(100万t)を発電で使用するには、単純計算で20社程度が必要になる。国内のカーボンニュートラル実現には、水素輸入の早期拡大と体制構築がカギだ。

図表1■水素供給量の目標と活用戦略

(出所)川崎重工業の資料を基に作成

 

水素供給コストについては、豪州からの輸入を前提に、現状の170円/Nm3を2030年に30円/Nm3まで低減するための所要量と設備を検討しており、これをベースに商用化に向けて技術実証していくことになる(図表2)。内訳は、CCS付き水素製造が日量770tで22円/Nm3から14.7円/Nm3、水素液化が日量1000t(現状は日量5t)で30円/Nm3から9.4円/Nm3、積み荷基地のタンク貯蔵量が20万m3(現状は2500m3の貯蔵タンクをHytouch神戸に設置)で33円/Nm3から3.2円/Nm3、液化水素の運搬〔世界で初めて開発した液化水素運搬船の運搬量1250m3(-253℃に冷やして体積を800分の1にした75tの液化水素)から16万m3への運搬船の大型化〕が年間22.5万t(現状は年間36t)で89円/Nm3から2.5円/Nm3を、それぞれ目指す。

商用化実証には、グリーンイノベーション基金を活用する。水素液化で日量100t、積み荷基地でのタンク貯蔵量5万m3、液化水素運搬船による運搬が年間3tを目標に、川崎重工が、水素液化機などの大規模設備の供給を想定している。経済性を見極めたうえで、同様の設備を複数供給することによって水素供給コストの低減を図り、30円/Nm3を目指す。

図表2■水素コストの低減目標

(出所)川崎重工業の資料を基に作成

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