アベイラビリティ・ペイメント方式の特徴と課題

<要点>

▼A/P方式は、公共施設の運営・維持管理における民間事業者のパフォーマンスに応じて、公的資金を財源に対価が支払われる方法。履行要件が満たされない場合は支払いが減額される。

▼A/P方式で支払いの上限が決まっている場合、民間事業者が利益を確保するにはコスト削減にしかインセンティブが働かない。従って、公共セクターにとってサービスを安定的に提供するには、民間事業者にパフォーマンスを発揮させる仕組みが必要になる。その一つが支払い減額システムである。

▼A/P方式の仕組みは、「骨太の方針」が言うところの「キャッシュフローを生み出しにくいインフラ」にも適用できる。ただし、支払い減額幅(ペナルティ)が大きすぎると業務参画する民間事業者が現れない。一方、減額幅が小さすぎるとコストを掛けて指標値を改善するよりは減額に甘んじたほうがよいというモラルハザードが起こる可能性が生じる。パフォーマンス指標の適切な選択と支払い減額幅の適切な設定が必須である。


アベイラビリティ・ペイメント(Availability Payment、以下A/P)方式について、米国運輸省(U.S. Department of Transportation)の「公共セクター向けP3調達ガイド」(Public-Private Partnership (P3) Procurement:A Guide for Public Owners、2019年3月発行)は次のように定義している。

A/Pはコンセッショネア(運営権者)への定期的な支払いで、一部は資本コストに充てられる。支払いは通常、プロジェクトの完成時に開始される。A/Pはコンセッション契約に定められた支払いスキームに基づいて調整され、コンセッショネアが契約に基づく履行要件を満たさない場合の下方調整を含む。A/Pの採用では、施設を満足な状態に維持するための財務的インセンティブをコンセッショネアに与え、規定された水準のパフォーマンスで施設を運営させることによって、公益を守ることができる」

米国道路PPP事業では、需要リスクをコンセッショネアが負う独立採算型のリアルトール(Real-toll)方式が先行したが、金融危機があった2008年前後を境に、需要リスクを公共セクターが負うA/P方式が増加してきた。同方式は、料金収入だけでは成立困難な事業、料金収入のない事業、公共セクターが通行料金のコントロールを保持したい事業などに導入のメリットがある。公共セクターは、A/Pの財源として公的財源を使い、料金収入の一部や他の資金を活用することもある。

公共セクターはA/Pを長期間にわたって支出し続けるという財務上の責務を負い、その支払いを他のニーズより優先させるため、公共投資全体の柔軟性を損ないかねない。従って、公共セクターはA/Pの支払い義務が財政の信用格付けに影響することを理解し、適用価値の高いプロジェクトを選定しなければならない。また、他の歳出義務に先んじて支払いを優先させるとはいえ、毎年の議会の予算承認がスムーズにいかないことに備える必要があり、「連続予算」を編成して予算遅れの影響を回避している例もある。

民間事業者にとってはリスクプレミアムが小さくなるため、資金を調達しやすくなる。しかし、A/Pが収入の上限となり、需要リスクが回避できても、運営・維持管理上のリスク(構造物の“隠れた瑕疵”や天候の影響など)は依然として残る。

民間事業者が最大アベイラビリティ・ペイメントを入札

A/P方式の特徴について、米国の道路P3事業で同方式が初めて採用されたI-595の事例を紹介する。同事業は拡幅や改良工事を含む延長約10.5マイルのDBFOM(設計・建設・資金調達・運営・維持管理)で、事業期間は35年(拡幅・改良工事5年、運営・維持管理30年)。2009年にフロリダ州交通局とACS Infrastructure Developmentグループ(スペイン)が契約を交わした。I-595 の契約書に規定されているA/P方式の特徴は以下の通りだ。

(1)A/Pは供用不能状態(Unavailability)と運営・維持管理不履行(O&M Violation)に伴う調整によって支払いが減らされる。
(2)供用不能状態による調整では、通行止め時間・車線数、時間帯、区間が考慮され、支払いが減らされる。
(3)運営・維持管理不履行による調整では、性能規定化された各項目のうちの未達項目に対し、不履行の程度に応じて減額幅が調整され、支払いが減らされる。

支払いの基本となる年間最大A/P(Maximum Availability Payment)は、民間事業者が入札した金額をベースに発注者と合意して決められる。I-595のMAPは年間6590.5万ドルだ(2009年時点)。

Unavailability event(車両衝突、落下物、防護壁への衝突、ポットホール、路肩流出、路面陥没、照明柱倒れ、橋梁への船舶衝突、自然災害、人的要因による事象など)による車線閉鎖に対する調整では、閉鎖車線数や時間帯などが考慮され、交通量が多い時間帯の多車線閉鎖の減額が大きくなっている。なお、民間事業者は特定の時間帯や車線を使って、支払い減額なしで維持管理計画を立てることができる。

一方、運営・維持管理不履行による調整額は、拡幅・改良工事中と運営期間中に分けて規定されている。運営期間中の運営・維持管理項目(舗装、ガードレール、標識、排水システム、料金設備、照明、橋梁、斜面、植栽、防音壁、ITSシステムなど)については、各項目に対する要求業務(Required Task)と、走行利用者の安全性に対する許容レベルとしての最低限の性能要求(Minimum Performance Requirements)、運営・維持管理不履行のクラス分け(O&M Violation Classification)、修復猶予時間(Cure Period)、再発間隔(Interval of Recurrence:修復猶予時間内に修復できなかった事象について減額が加算される間隔)が示されている。

例えば、交通事故処理や散乱物除去、舗装の状態、橋梁のメンテナンスなどについて、性能要求、修復猶予時間、支払い減額幅が具体的に数値化されており、緊急で修復猶予時間が短い事象の不履行ほど安全性を損ねるため、減額幅を大きくして民間事業者のパフォーマンス発揮を促している。

受発注者間でwin-winの関係を構築

利用料金が民間事業者の収入となるリアルトール方式では、コストを掛けてでも施設をAvailable(供用可能)な状態に保つことが利用料金収入の確保につながるため、Unavailability eventの回避や施設閉鎖時間の短縮にコストをかけるインセンティブが働く。これに対して、A/P方式で収入の上限が決まっていると、受発注者間に何らかのインタラクションがない限り、民間事業者が利益を確保するにはコスト削減にしかインセンティブが働かない。従って、公共セクターにとってサービスを安定的に提供するには、民間事業者の運営・維持管理業務におけるパフォーマンスを発揮させる仕組みが必要になり、パフォーマンスを測定する指標を利用した支払い減額メカニズムがA/P方式の特徴になっている。

A/P方式の仕組みは、利用料金収入のない一般施設、「骨太の方針」が言うところの「キャッシュフローを生み出しにくいインフラ」にも適用できると考えられる。ただし、支払い減額幅(ペナルティ)が大きすぎると業務参画する民間事業者が現れない一方、減額幅が小さすぎるとコストを掛けて指標値を改善するよりは減額に甘んじたほうがよいというモラルハザードが起こる可能性が生じることも懸念される。従って、A/P方式ではパフォーマンス指標の適切な選択と支払い減額幅の適切な設定が必須である。

A/P方式は、Performance-based contract(性能規定型契約)に用いられる支払い手法の一つと位置付けられる。A/P方式は上述してきたようにMAPからの減額が一般的だが、英国などでは、民間事業者のパフォーマンス発揮の結果、指標達成値が目標値を上回った場合にボーナスを設ける方式も採用されている。いずれにしても、PPPの原則と同様、発注者と民間事業者の間にウィン-ウィンになる関係(発注者:公共サービスの安定的な提供、民間事業者:利益確保)を構築することが、支払い調整メカニズム設計の要諦である。

 

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