東日本旅客鉄道(JR東日本)と東急不動産ホールディングス(東急不動産HD)はこのほど、住宅都市開発、再生可能エネルギー活用、海外展開などの分野でのシナジーを狙い、包括的業務提携契約を締結した。期間は2023年2月~33年2月。 再エネ分野では、東急不動産HDの開発・運営ノウハウとJR東日本グループが保有する土地・建物資産を活用し、太陽光発電施設などの開発を進める。5年以内に5カ所程度の再エネ事業を創出し、その後も拡大していく計画だ。
開発を加速するための資金はファンドで調達する。東急不動産HDが保有する既存再エネ発電施設2~3カ所をシードアセットとした100億円規模のファンドを、2023年度に組成する。10年間で1000億円規模を目指す。
「点のビジネス」と「線のビジネス」の相乗効果
JR東日本グループの鉄道の営業キロ数は約7400km、駅数は1677あり、広大なネットワークを形成している。線路、駅、鉄道林、変電所といった運輸事業に関わる施設のほかに、オフィスビル、ホテル、商業施設といった施設を保有。これらの土地や建物が再エネ発電の開発場所になる。
同社は電車の走行や駅、オフィスビルでの照明・空調などに大量の電力を消費する需要家でもある。太陽光発電や風力発電などの再エネ開発にも積極的に取り組んでおり、2021年度時点で130MWの再エネ電源を、2030年までに700MWにする目標だ。
一方の東急不動産HDは、再エネ事業を自ら「強み」と称する。2022年末時点で開発中の案件も含めて85件、1389MW(持分換算前)の再エネ発電施設を保有する。太陽光のほかに、風力、バイオマスも手掛けており、国内では名実ともに指折りの存在だ。2025年度に2100MWの目標を掲げている。
今回の提携では、不動産・再エネ発電施設開発という「点のビジネス」と、鉄道という「線のビジネス」の相乗効果が期待できる。不動産事業は基本的に人口の集積地で行うものだが、再エネ発電は送電網や蓄電設備が整えば、人の少ない場所での開発が可能だ。2社の提携による再エネ開発の加速は、沿線人口が減少する地域に収益拠点を築くという「地域創生」の面でも可能性を秘めている。