国土交通省が11月に発表する新たなインフラメンテナンス戦略は、インフラの維持管理・運営業務のあり方を大きく変えることになりそうだ。
9月に社会資本メンテナンス戦略小委員会が討議した「地域インフラ群再生戦略マネジメント(案)」は、複数・広域・多分野のインフラ施設を「群」として捉えることにより、一体的・効率的にマネジメントすることが可能となると指摘。一定規模の業務をまとめて発注することで、民間の創意工夫、技術開発を促し、メンテナンスの産業化につながると呼びかけた。包括的民間委託の実施にあたって、性能規定や指標連動方式(アベイラビリティ・ペイメント方式)の必要性にも言及している。
背景にあるのは、建設から50年以上経過する施設の割合が加速度的に増加するという危機意識だ。一方で人口減少や少子高齢化は止まらず、包括化による業務の合理化や、デジタル技術を用いた業務の効率化が不可欠になっている。インフラ維持管理の広域化や包括化を求める提言はこれまでにもあったが、状況の切迫感が「インフラ群再生」という考え方の浸透を後押ししそうだ。
求められるのは請負力ではなく提案力
特に影響が大きそうなのは、「インフラの管理者単位ではなく、近接する市区町村、都道府県や民間所有のインフラなど、管理者をまたぐ活用」の部分。業務の発注が従来の自治体単位ではなくなることを示唆する。これに伴って、インフラの機能や性能を満たすための性能規定の導入機運が高まり、指標連動方式も徐々に広がっていくことになるだろう。
包括的民間委託は長期契約が前提となるので、新しい環境下では、定められた期間で最大のパフォーマンスを発揮できる民間事業者が選ばれることになる。求められるのは請負力ではなく提案力だ。大ロットの業務を効率的にこなすことができれば、自治体の維持管理コスト低減と民間事業者の収益拡大を両立できる可能性がある。
ただし、地域インフラ群再生戦略が定着するには課題も少なくない。「管理者をまたぐ活用」によって、負担が増える自治体と減る自治体が生じる。負担が増える主導的立場の自治体にインセンティブが働かなければ、いくら国が働きかけても普及は難しい。トラブルが起きたときの責任の所在も、明確にしておくべき問題だ。民間事業者が参加しなければ“絵に描いた餅”に終わるので、参入意欲が高まるような「事業化の工夫」も不可欠である。
「地域インフラ群再生戦略」がもたらす業務変革の考察を、10月に発行する「インフラ・グリーン・デジタル投資 2022年9月」(有料)に掲載します。