ソーシャル・インパクト・ファンドに投資、三井住友海上や山陰合同銀行

三井住友海上火災保険と山陰合同銀行は7月、「Next Riseソーシャル・インパクト・ファンド」に出資するとそれぞれ発表した。このファンドは、ドリームインキュベータ子会社のDIソーシャルインパクトキャピタル(東京都千代田区)が2021年に創設したもので、日本政策投資銀行、日本生命保険などが既に投資家として参画している。ファンドの存続期間は10年間。設立時に30億円だった出資額は39億円になった。

 

SIBの仕組み (出所)ドリームインキュベータ

 

ファンドは、介護、公共施設、インフラ、リサイクルなどの分野で、社会課題の解決に資する民間事業者の活動に事業資金を供給する。サービスの成果に応じて自治体が民間事業者に対価を支払い、それが投資家へのリターンの原資となる。成果は第三者の評価機関が検証する。

サービスの成果に応じて行政が対価を支払うスキームは、成果連動型民間委託契約(PFS:Pay For Success)と呼ばれる。このうち民間から資金調達する手法がソーシャル・インパクト・ボンド(SIB)であり、資金調達のところでファンドの仕組みを用いたのが今回の取り組みだ。

定額を支払う従来手法に比べて、SIBにはいくつかの効果が期待できる。行政は、資金調達や事業実施のリスクを民間に移転し、成果に基づく合理的な支払いができる。これに伴って市民や社会は、質の高いサービスを享受できるようになる。民間事業者や投資家は、社会貢献度の高い事業に関与し、目標を達成することでリターンを得る。

 

松江市とSIB活用に向けて覚書

SIBに関して、別のニュースも出てきた。ドリームインキュベータは7月22日、同社と山陰合同銀行、日本政策投資銀行、松江市の4者が、SIBの活用に向けた調査・研究に関する覚書を締結すると発表した。

対象分野は、医療・健康、都市基盤、防災・災害対策、産業振興、環境・エネルギー、教育など。松江市の社会課題を解決して、より大きな社会的インパクトを創出することを目指す。自治体の財政健全化にも通じる試みだ。

政府は6月7日に閣議決定した「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針2022)で、「SIBを含む成果連動型民間委託契約方式を通じて、複雑化する社会課題の効率的、効果的解決を促進し、さらに、社会的インパクト投資資金を呼び込むための環境整備に取り組む」と記した。案件形成を含めて、複数年にわたって支援していく方針だ。

 

<ファンドの概要>

  • 名称:Next Riseソーシャル・インパクト・ファンド投資事業有限責任組合
  • 設立:2021年7月
  • ファンド規模:39億円
  • 出資者:ドリームインキュベータ、日本政策投資銀行、日本生命保険、DIソーシャルインパクトキャピタル、山陰合同銀行、三井住友海上火災保険
  • 無限責任組合員(運用者):DIソーシャルインパクトキャピタル
  • ファンド存続期間:10年間
  • 組入対象:自治体の社会課題の解決に資する事業
  • 特徴:第三者の評価機関が検証した事業の成果に応じ、成果実現報酬を受領

 

InfraBiz
関連サイト
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ドリームインキュベータの発表
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