Westhof Bio、農産廃棄物利用の循環型エコ農業を推進

バイオガスCHPでエネルギーニュートラルを目指す  LRI Energy & Carbon Newsletterから

ドイツは昨年、2030年までのCO2排出量削減目標を55%から65%(1990年比)に引き上げ、2050年の排出ニュートラル実現に向け手綱を引き締めた。農業分野ではCO2換算排出量を2030年までに年間5,400万トンまで低減するという目標を掲げる。2014年比で1,400万トンを削減するための10の重点課題の主要点は窒素排出削減、家畜糞尿・農業廃棄物からのバイオガス生成・生産拡大、エネルギー効率化に加え、化学肥料や農薬による環境負荷の軽減を配慮した環境保全型農業(以下、エコ農業=ecological agriculture)の拡大である[1]。昨年12月に発足した社会民主党(SPD)・同盟90/緑の党・自由民主党(FDP)による新連立政権は、連邦食糧農業省を通してエコ農業の推進に注力する姿勢を明らかにした。2017年に打ち出した環境保全型農業の未来戦略(Zukunftstrategie Okologischer Landbau)は2030年までに同農業形態を作地面積全体の20%にすることを目標とするが、これを30%に引き上げるため戦略措置を見直す考えである[2]。

 

ドイツは欧州でも有機食品の人気が高い国のひとつである。2020年は新型コロナ禍の影響で外食の機会が制限されたこともあり、有機食品の総売上高はほぼ150億ユーロで、前年比22%の大幅増となった。食糧農業省の委託による有機食品の利用に関する消費者調査(2020年)によると、有機食品を常に、あるいは頻繁に購入しているという回答は37%に上った。有機食品は今やあらゆるスーパーマーケットで手に入り、多少価格は割高でも、環境への悪影響がなく適切に生産されている(購入理由の回答の51%)、健康な食品である(同25%)と認識する消費者が増える傾向にあり、需要はさらに拡大すると予想される。

 

Westhofグループ ― 循環型エコ農業を実現

ドイツ最北端シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州のデンマーク国境に近い農村部に拠点を構えるWesthof Bioグループ[3]は、2002年に2人の農業経営者が大規模な有機栽培農業を目指して起業し、年商約750万ユーロの中小企業に成長した。2か所の生産拠点を合わせた作付面積は約1,000ヘクタール(うち10ヘクタールは温室栽培)で、年間約4万5,000トンの農産物を生産し、生鮮および冷凍加工品として販売している。一方、農産廃棄物を利用したバイオガス発電を独立事業として構築し、生産から加工、顧客への商品引き渡しまでのエネルギー需要を自社で賄い、エネルギーニュートラルを目指している。循環型エコ農業のグッドプラクティスの好例(ビジネスモデル図)と言える企業である。

 

エネルギー事業子会社、Westhof Energieは、2013年に電熱併給システム(コージェネレーション、CHP)を導入し、翌年にバイオメタンガス生成装置を設置してバイオガスの自社生産を開始した。休耕地の緑肥植物(クローバーなど)や商品規格外の野菜など植物廃棄物を燃料として利用する再生サイクルを創出するためである。2020年には2つの生産拠点を合わせて、新たにCHP(発電容量2MW、熱供給能力2.2MW)4基、温室併設用CHP(発電容量3.3MW、熱供給能力3.8MW)1基を増設し、発電能力を大幅に増強した。同時に、バイオガス生成装置2基と貯蔵タンク3基(800、1,200、1,500m3)も導入し、CHPの稼働状況に応じて柔軟に燃料供給できる体制を整備している。バイオガスの生産量は年間200万m3を超える[4]。植物系廃棄物の発酵に伴う排熱は温室や冷凍加工時の加熱処理に利用され、発酵残滓は肥料として使われている。同社が採用した2G Energy社(ドイツ)のCHPは、温室栽培のトマトとパプリカの生育促進用に、稼働時に発生する排ガスをCO2濃度の高い気体に精製する。湿度、温度、CO2濃度などのパラメータを調整できるため、特に温室への熱電・CO2供給の面で非常に効率が良く、収穫量が1割増えたという。また、年間10万kWhを上限として、電力の小売販売も行っている。

 

2021年に立ち上げた冷凍加工工場の刷新増強プロジェクトは、連邦環境省の環境刷新プログラム(Umweltinnovationsprogramm)から約750万ユーロの助成金を受けている[5]。1日当たりの加工能力を現在の5倍の240トンへと大幅に増強すると同時に、再生可能エネルギー100%利用、エネルギー効率化、廃水処理、資源節約・再利用という観点を統合した排出ニュートラルな循環型の食品生産モデルの実現を目指している。年間の電力・熱消費量を69%削減、CO2排出量を年間6,077トン(毎時10トンあたりの加工量ベースで67%)削減、加工量1トンあたりに要する水消費量を従来の10分の1(0.97m3)に大幅削減する計画である。

 

※この記事は、英国のロンドンリサーチインターナショナル(LRI)の許可を得て、LRI Energy &
Carbon Newsletterから転載しました。同社のコンテンツは下記関連サイトからご覧になれます。

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[1] 連邦食糧農業省HP Agriculture and Climate Change Mitigation https://www.bmel.de/EN/topics/farming/climate-stewardship/agriculture-climate-change-mitigation.html
[2] 連邦食糧農業省HP Oko-Landbau starken: Zukunftsstrategie okologischer Landbau https://www.bmel.de/DE/themen/landwirtschaft/oekologischer-landbau/zukunftsstrategie-oekologischer-landbau.html
[3] Westhof Bioグループ HP https://www.westhof-bio.de/?lang=en
[4] Bundesverband des Kraft Warme Kopplungs e.V. (独CHP連盟)2021年5月1日付連盟誌記事 https://www.westhof-bio.de/wp-content/uploads/2021/08/BHKW-des-Monats_03-21.pdf
[5] 連邦環境省 HP https://www.umweltinnovationsprogramm.de/projekte/die-co2-freie-netzdienliche-bio-fabrik-netfrobio

宮本 弘美 (LRIコンサルタント フランクフルト)
関連サイト
LRI ニュースレター エネルギー&カーボン
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