会計検査院・PFI事業検査報告(1)「案件形成ありき」に一石

会計検査院が5月14日に公表した「国が実施するPFI事業について」と題した報告書が、PFIの光と影の両面を浮かび上がらせた。関係者にとって必見の内容だ。

まずは光の部分から見てみよう。国がコンセッション方式(公共施設等運営事業)を導入した仙台空港、高松空港、福岡空港の3事業について、従来方式で国が運営した場合と比較。従来方式の収支が合計で102億円だったのに対して、コンセッション方式の見込額は4532億円となった。福岡空港の運営権対価4460億円が大きく寄与した。コンセッション以外の独立採算型3事業は、PFI導入後に民間事業者から施設使用料を徴収してプラス13億円の収支となった。財政健全化に貢献があったたことがわかる。

 

管理者の対応不備でSPCに損害

一方で、影の部分にも踏み込んでいる。サービス購入型の57事業のうち26事業で、不適切な「債務不履行」が計2367件も発生していた。このうち2264件は7事業で起きていた。3事業ではサービス対価を減額しており、その合計は約7600万円だった。

法務省の更生保護施設、「島根あさひ社会復帰促進センター」では、食事への異物混入や食事の遅配などが繰り返し発生しており、年間平均で65.6件の債務不履行があった。2012年度の債務不履行は144件に上る。

国土交通省関東地方整備局が管理する八王子市の「八日町地下駐車場」(車室数202室) では、施設管理者が修繕すべき機械式駐車場設備の不具合が多数報告されていた。 しかし十分な修繕が行われず、約40%が使用できなくなっていた。これにより、駐車場収入が計画額の2973万円よりも1307万円低い1666万円(計画額の56%)にとどまった。会計検査院は「SPC等の財務状況に少なからず悪影響を与えている」と指摘した。

 

妥当性を欠いた割引率

PFI事業選定の問題点にも言及した。会計検査院が、国や自治体が実施した場合の事業価値と、PFIを導入した場合の事業価値を改めて比べたところ、PFIを導入せずに従来方式で実施した方が安上がりな事業が多数見つかった。事業選定時の計算に用いる割引率が金利情勢を考慮していなかったことが判明した。

2020年7月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太方針)」には、「あらゆる分野において民間資金・ノウハウを積極活用し、コンセッションなど多様なPPP/PFIを推進する」と書かれている。政府が推進姿勢を明確にするなかで、 一部のPFI事業については、「案件形成ありき」で根拠を後付けすることが問題視されてきた。会計検査院の指摘は、自治体が実施するPFI事業も含めて、こうした傾向にブレーキをかけ、案件形成やモニタリングの健全化を促すことになりそうだ。 (次回に続く)

InfraBiz
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