内閣府は10月31日付で、PFI法第6条に基づき公共施設の管理者に提案を行った民間事業者に加点するよう、関係省庁や都道府県の担当者に通知した。
加点は、従来の公共事業方式と比べて、PFIの総事業費がどれだけ削減できるかの割合である「VFM」(Value for Money)を目安として設定する。特定事業選定段階のVFMが10%の場合、寄与度に応じて、審査時総配点の5~10%を民間提案事業者に付与することを例示した。具体的な配点は、調達する案件の性質に応じて、各管理者が設定するよう付記している。
6月に公表された「PPP/PFI推進アクションプラン(令和4年改定版)」が、案件形成の促進手段として「民間事業者による提案が積極的に活用されるよう実効性の高い環境整備を行う」との方針を示したことを受けての措置だ。6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)も、「民間の創意工夫の一層の発揮に向け、提案者へのインセンティブ付与等民間提案制度の強化等に取り組む」と明示していた。
内閣府がまとめた「PPP/PFI推進アクションプラン総括レビュー」によると、これまでのPFI事業のVFMの平均値は、特定事業選定時が7.9%、落札後の最終が16.8%。2020年度は、特定事業選定時5.2%、最終12.4%となっている。
11月に事業者が決まる川崎市等々力緑地の球技専用スタジアム、アリーナ、駐車場の3施設を対象としたコンセッション事業は、PFI6条提案の制度に基づき東急が提案した。この事業では、特定事業選定段階のVFMが12.2%で、総合評価点の配点1100点のうち100点(9%)が民間提案による加点とされた。
PFI法第6条は、民間側から国や自治体などの公共施設の管理者に対してPFI事業の実施を提案できる制度を定めている。提案を受けた管理者は、事業化を検討しなければならない。ただし、事業化されても提案者が事業者として選ばれるとは限らず、提案者のインセンティブが課題とされてきた。提案者が優位になる仕組みがないと、提案する意欲がわかず、案件形成が進まないおそれもある。PFI法6条に基づくこれまでの民間提案件数は10件に満たず、国の事業に対する提案は皆無だといわれている。VFMの考え方は次の通りだ。
今回の通知は、提案によって管理者に大きな事業費削減効果が認められれば、事業者選定段階の加点が大きくなる合理的な考え方を示した。一方でPFIに関しては、VFMを事業化の唯一の尺度とすることを考え直す動きもある。
内閣府が5月に公表した「令和3年度 今後のVFM評価に関する調査・検討業務 報告書」は、「今後実施されるPFI事業においては、PSCやLCCによる事業費用に基づいたVFMを用いるのではなく、価格以外の品質・性能・環境配慮等の向上による価値創造を組み込んだより包括的なVFMを考えるべきではないか」と記している。こうした状況を踏まえると、地域社会への経済波及効果、雇用の増大、深刻な人員不足の解消といった有効性がある場合、事業費ベースのVFMが小さくとも、提案者への加点を大きくすることも選択肢になる。
PFI法改正案についての解説を、月次レポート「インフラ・グリーン・デジタル投資 2022年10月」に掲載しました。また、PFI法第6条に基づく民間提案の解説を「インフラ・グリーン・デジタル投資 2022年11月」に収録しています。