スペインFerrovialの2020年決算、空港会社の貢献分がマイナス4.47億ユーロ

売上高114.22億ユーロ、純利益3.59億ドルの損失

スペインのインフラ総合会社Ferrovialの2020年決算は、売上高(継続事業)63億4100万ユーロ(約8200億円、前年比4.7%増)、EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)が4億900万ユーロ(同238%増)、EBIT(利払い・税引き前利益)は2億2600万ユーロ(同43.6%減)となった。持分法適用会社(出資比率50%以下)からの貢献分が3億7800万ユーロの損失(前年は2億9600万ユーロの利益)と大きく落ち込んだため、純利益は3億5900万ユーロの損失(前年は2億5900万ユーロの利益)と、大幅な減益となった(図表1)。

Ferrovialは、道路運営会社(Cintra)、空港運営会社(Ferrovial Aeropuetos)、建設会社(Ferrovial Construction、ポーランドBudimex、米国Webber)、サービス会社(Ferrovial Servicios)を傘下に持ち、欧州や北米を中心として、インフラの運営事業や建設事業に参画している。

運営事業は有料道路と空港に大別できる。両部門とも、出資比率が50%超の連結対象の資産と、出資比率が50%以下の持分法適用会社の資産がある。連結会計では、持分法適用会社の決算項目はEBIT以降に反映される(図表1)。これを見ると、持分法適用会社からの利益が3億7800万ユーロの損失となっており、中でも英国ヒースロー空港などの空港事業の損失が4億4700万ユーロ(前年は1億1500万ユーロの利益)と大きい(図表2)。COVID-19対策による旅行制限措置の影響で、ヒースロー空港の旅客数が前年比72.7%減、AGS(アバディーン空港、グラスゴー空港、サザンプトン空港)が同75.9%減と、大幅に減少したためだ。英国の航空業界も窮地に陥っており、地域航空会社フライビー(Flybe)が3月に経営破綻した。

有料道路事業について、連結会計対象の道路(米国テキサス州など)は、売上高4億500万ユーロで前年(6億1700万ユーロ)比33.4%減。持分法適用対象の道路(カナダ407ETRなど)は、貢献利益が6200万ユーロで前年(1億8200万ユーロ)比65.9%減。道路交通量もCOVID-19の影響を大きく受けた。4月上旬に底を打って、その後着実に回復したが、年末の感染者数の急増によって新たな封鎖と規制強化が実施され影響が拡大した。交通量の減少は、大型車より小型乗用車が顕著だった。米国テキサス州の管理レーン(Managed lanes)のNTEは通年で前年比26.1%減、LBJは同37.6%減、NTE35Wは同14.3%減、カナダ・407ETRは同45.3%減となった。

建設事業については、工事の中断や減速のために、売上高が3億ユーロ低減したと推定されるが、全体では高水準の売り上げが維持され、前年比11.4%増の58億6200万ユーロ。有料道路事業と空港事業は減収だったが、建設事業の増収が効いて、「継続事業(Continuing operations)」全体の売上高は増収となった。

Ferrovialの決算では、サービス事業を「非継続事業(Discontinued operations)」に分類しているのが特徴だ。売上高が50億8100万ユーロ、EBITDAが1億8600万ユーロ、純利益が300万ユーロの損失だった(図表1の「非継続事業からの純利益」欄に反映)。継続事業・非継続事業を併せた総売上高は114億2200万ユーロ、連結純利益が3億5900万ユーロの損失となっている。

 

図表1■Ferrovialの2020年決算

(出所)FERROVIAL, S.A. & SUBSIDIARIES January – December 2020 results

 

図表2■有料道路・空港事業の収益状況

単位:百万€。Ferrovialが参画する道路と空港を一覧表にした。左列(連結会計:持分比率が50%超の会社が対象)に掲載した道路・空港の売上高、EBITDAが図表1の売上高、EBITDAに反映されている。右列(持分会計:持分比率が50%以下の会社が対象)に掲載した道路・空港の貢献利益の総計₋3.78億€(損失)が図表1の「持分法適用会社からの利益」欄に反映されている (出所)FERROVIAL, S.A. & SUBSIDIARIES January – December 2020 resultsから関連データを抽出して作成

 

米国・ポルトガルでコンセッション会社株式売買、豪州で子会社売却

そのほか、個別の動きを挙げる。米国I-77(ノースカロライナ州)では、Cintraを通じてコンセッション会社への出資比率を50.1%から65.1%に引き上げた。取引価格は、7800万米ドルに加えて、2024年6月時点の資産評価に基づく270万米ドルの繰り延べ支払い分を含む。ポルトガルでは、アベイラビリティベースPPPの有料道路コンセッション会社の株式を売却した。9月にCintraを通じて、Norte Litoralの株式49%とVia do Infante(Algarve)の株式48%を1億7200万ユーロでDIF Capital Partnersに売却することで合意。契約の一環として、Cintraは両道路のマネジメント契約を締結する。売却プロセスのなかですでに1億ユーロを受領、7200万ユーロが未受領だ。

豪州では、子会社Broadspectrum(Ferrovial Services Australia。旧Transfield Servicesを2016年にFerrovialが買収)を売却。19年12月のVentia Services Groupとの合意に基づいて、20年6月に売却を完了した。取引価格は4億6500万豪ドル。また、ポーランドでは20年6月に、建設会社Budimexの株式5%を売却した。依然として支配株(50.1%)は保有している。

 

英国では、子会社Ameyがバーミンガム市と契約していたハイウェイPFI事業の終了に伴って、同市に支払うことで合意した2億1500万ポンドのうち、2019年に支払った1億6000万ポンドに続き、25年までに支払う残り5500万ポンドの一部として、20年に1000万ポンドを支払った。ただし、これらの支払いはFerrovialの決算には影響していない。

 

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