洋上風力事業者選定で運開時期の配点増、価格点の算出変更、複数域同時公募で落札制限

経済産業省と国土交通省は5月23日、総合資源エネルギー調査会・洋上風力促進ワーキンググループと交通政策審議会・洋上風力促進小委員会の合同会合で、再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業者公募の評価見直し案を提示した。

現行の評価は、「事業実現性評価」(120点)と「供給価格点」(同)を合わせた240点満点とし、「事業実現性評価」は、「事業実施能力」(80点)と「地域との調整、地域経済等への波及効果」(40点)の2要素で構成されている。

見直し案では、評価点の大枠を堅持しつつ、事業実施能力の項目と配点の再構成、供給価格点の算出方法、複数区域同時公募時の落札制限などが提示された。各項目について、それぞれ詳細が示されており、当日の合同会合では委員から「運転開始時期の評価に対する配点(20点)が大きすぎる」「運転開始時期の遅延時のペナルティとして没収する保証金額の妥当性を検討する必要がある」「落札制限に対して、合理的な説明が必要」といった意見が出た。今後も引き続き、見直し案の検討が進められる。各項目の概略は下記の通り。

(1) 事業実施能力の項目と配点を再構成

  • エネルギーミックス等の政策目標に資する早期の運転開始時期の提案に関してインセンティブ付けするため、「事業計画の迅速性」として、運転開始時期を切り出して評価(20点)。
  • 「事業計画の実現性」(現行20点)は「事業実施実績」(同30点)と合わせて、事業計画の「基盤面」と「実行面」を評価する要素に分けて、各項目に重み付けをした配点を設定。公募占用計画で提出する「リスク特定・分析」(同15点)の内容を含めて評価(現行の計65点→「事業計画の基盤面」と「事業計画の実行面」にそれぞれ20点)。
  • 現行の「電力安定供給と将来的な価格低減」(10点)から、「将来的な価格低減」を評価対象から除外し、「電力安定供給」としてサプライチェーンの強靱性を評価。エネルギー政策上の電力安定供給の重要性の高まりから、配点を拡大(現行10点→20点)。
  • 「最先端技術の導入」については、評価項目を設定しない(現行5点→0点)。

図表 事業実施能力の項目と配点の再構成

(出所)経済産業省・国土交通省

(2) 供給価格点の算出方法

  • FIT(固定価格買取)制度における調達価格と、FIP(フィードインプレミアム)制度における基準価格は同水準のため、FIP制度を活用する場合も、基本的には同様の算出式とする。「供給価格点=(公募参加者の最低供給価格/提案者の供給価格)×120」(※)。
  • FIT制度では調達価格(固定)×kWh=売電収入(固定)であるものの、FIP制度では基準価格は固定価格だが、売電収入は市場価格や相対取引の契約条件によって決定されるため、必ずしも基準価格×kWh=売電収入ではない。海外のFIP制度では、例えば、基準価格を0円/kWh(市場価格や相対取引を指向し、FIPによるプレミアム収入は0、またはFIP制度を活用しない)で応札する事例もある。このため、供給価格点評価では、事業者が提案する基準価格が一定価格(最高評価点価格)以下の場合は、一律120として評価する。
  • 入札において、最高評価点価格以下の供給価格の提案があった場合、供給価格点の算出式(※)における「公募参加者の最低供給価格」は最高評価点価格とする。なお、最高評価点価格の設定については、公募占用指針策定時に「調達価格等算定委員会」の意見を聴取して決定する。

以上の見直し案に準拠すると、事業実現性評価で、公募事業者の評価区分(5段階)が全て「トップランナー」だと120点満点、全てが「優れている」だと90点になる。一方、供給価格点で「最高評価点価格」が10円/kWhとし、「優れている」事業者が10円/kWh以下(最高評価点価格以下は一律120点)を入札したとしても、「トップランナー」事業者が13.3円/kWh以下を入札すると、逆転できないことになる。

(3) 複数区域同時公募時の落札制限

  • 多数の事業者に参入機会を与える観点から、多数区域で公募を実施する際に、効率的なサプライチェーン形成の阻害とならないように一定規模を確保することや、事業実現性と価格評価が著しく劣る事業者が選定されることがないように配慮したうえで、応札段階では入札数に制限を掛けずに、落札に制限を設ける。
  • 具体的には、1つの公募で一定規模の複数区域を対象とする場合、公募参加者の1者あたりの落札制限として基準(例えば、1GW)を設ける。この場合、公募参加者1者が選定された促進区域の系統容量合計が1GW以上となった場合、落札上限に達したと判断し、当該参加者による残りの海域の応札提案は無効とする。
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