通信施設のインフラシェアリング事業をめぐる動きが、日本でも活発になってきた。JTOWERはNTT東日本から通信鉄塔136基を総額約9億円で取得する。3月14日に契約の合意について発表した。取得後、既存の鉄塔利用者の契約をJTOWERに移行。同社はほかの通信事業者も誘致し、複数の通信事業者が施設を賃借するインフラシェアリング事業を拡大する。
インフラシェアリングは、通信事業者の設備投資額の抑制や、5Gネットワークの早期整備に貢献する。通信タワーの乱立が避けられ、環境負荷や景観の面でも好ましい。岸田文雄首相が掲げる「デジタル田園都市国家構想」も、インフラシェアリングを活用した基地局整備を働きかけている。
JTOWERとNTT東日本は、5Gアンテナ基地局や高速Wi-Fiアクセスポイント、非常用バッテリー、デジタルサイネージ、AIカメラなどを備えたスマートポールの運用でも連携している。東京電力パワーグリッドを加えた3社の共同提案が東京都の検証事業として採択され、西新宿エリアに20基のスマートポールを設置する計画だ。2022年1月に発表した。
2021年7月には、NTT西日本が71基の通信鉄塔をJTOWERに売却する契約を結んだ。JTOWER以外では、住友商事と東急が基地局シェアリングに取り組んでおり、2021年3月に共同出資のSharing Designを設立した。2022年1月には、三菱地所がインフラシェアリング事業への参入を表明。5年間で300億円を投じ、1000サイト超のインフラを建設する方針を打ち出した。東京電力パワーグリッドは、同社所有の電力アセットを5Gインフラとして共有することに前向きな姿勢を示している。
新製品の開発で、インフラシェアリングのニーズに応える取り組みもある。AGCは2022年3月、複数の通信事業者が共同で利用できるガラスアンテナを開発したと発表した。建物の窓に室内側から貼り付けるタイプだ。建物の外観を損なわず、通信事業者の設備投資を軽減する効果が見込める。この開発にはNTTドコモとJTOWERが協力した。