スマートシティ:エストニアのAIスタートアップ R8 technologies

LRI Energy & Carbon Newsletterから

デジタルFM(Facility Management)は、エンジニア、テクニシャンたちが現場で忙しく走り回って行ってきた建物施設のメンテナンス、管理のやり方を根本から変える破壊フォース(Destructive force)である。デジタルFMに代表されるスマートビルディングはスマートシティの一部であるが、スマートシティはIoTなどのデジタルテクノロジーが、従来からあった仕事のやり方そしてビジネスモデルを破壊するという側面をもつ。

デジタルFMのプラットフォームとしてBMS(Building Management System)がある。BMSは建物施設のHVAC (Heating, Ventilation, and Air Conditioning)、電気、機械設備を監視、管理するための自動制御システムである。BMS市場のトップ10には次の企業が含まれる[1]。Cisco(米)、Honeywell(米)、Johnson Controls(米)、Schneider Electric(仏)、United Technologies(米)、Emerson Electric(米)、Siemens(ドイツ)、Bajaj Electricals(インド)、Bosch(ドイツ)、Building Logix(米)。

BMSによる建物施設のHVACの省エネ、カーボン削減はカーボンニュートラル目標達成のために不可欠である。そのためHVACに関連する産業の市場規模は大きい。英国の主要なHVAC関連企業は数年前までに、ほぼ根こそぎ海外企業に買収されている。

筆者は10月6日にロンドンで開催されたSmart Buildings Showに行ってきた(マスク着用者は見かけなかったが、入場時にワクチンを2回接種済みであることを示す必要あり。英国内の当日のCovid新規感染者数は3万人強)。展示者の一つにIT先進国として知られるエストニアのAIテクノロジースタートアップ、R8 Technologies(R8tech)があった。同社はAIデジタルオペレーターと呼ぶAIベースのソフトウェアをSaaS(Software as a Service)として、既にBMSを設置している建物を対象に提供している。

このテクノロジーは、既にあるBMSを「奴隷」として扱い、当該建物のHVACに関連する省エネ、室内の快適性、そして設備の故障の検知を実現する。オンラインで設置、インテグレートでき、ユーザはそれが不用になればいつでも削除できる。同テクノジーの指令を(手動で)拒否することもできる。課金は、設置から1ヶ月間で集めたデータ及び過去のデータを基にベースケースを定め、それを基準に達成できたパフォーマンスから計算される(固定料金を選択することもできる)。

同テクノロジーはまた電気料金の節約を可能にする。現在はノードプールに限られるが、同市場の価格に自動的に反応し電気料金を節約するように設備を調整する。アグリゲータとの協業も行っている。

R8techは4年前に設立さればかりであるが、既に18カ国でサービスを提供している。ポートフォリオには総床面積は90万平方メートル強の40を超える建物が含まれる。現在、北米市場への進出の準備を行っている。

同様のテクノロジーサービス企業には、カナダのBrainbox AIがある。他にもあるのであろうが、市場がまだ未開拓で、しかもその潜在規模は大きいため、実質的に他社と競合するといった状況にはない。R8techそしてBrainbox AI共に、エネルギー消費量を最大25%-30%削減できるということを述べている。両社はそのような省エネがユーザにとって初期投資なしで実現できるという価値を提供しているのである。

R8techのCEO、Siim Takker氏は調布の電機通信大学にリサーチャーとして1年間在籍したことがあるエンジニアである。彼によるとR8techのRはロボット(Robot)、そして8は無限(Infinityのシンボルの横向き)を意味するそうである。次の投資ラウンドは来年の春くらいで、2-4百万ユーロくらいを調達したいということである。

AIは既存のシステムあるいはサービスの上に、新たなシステム、サービスを加えることを可能にするが、一般の企業では人材不在のためにそれができない。IT人材に恵まれたエストニアには他の企業に代わってそれをすることができる企業があるということをR8techは証明している。

 

※この記事は、英国のロンドンリサーチインターナショナル(LRI)の許可を得て、LRI Energy &
Carbon Newsletterから転載しました。同社のコンテンツは下記関連サイトからご覧になれます。

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[1] https://blog.technavio.com/blog/top-10-building-management-system-companies-worldwide

津村 照彦 (LRI 会長)
関連サイト
LRI ニュースレター エネルギー&カーボン
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