脚光浴びるアセットリサイクリング、既存インフラから新規インフラへ資金を循環

米上院が可決した総額約1兆ドル(110兆円)のインフラ投資法案。6月にバイデン政権が公表した計画には、財源の一つとして「アセットリサイクリング」が盛り込まれ、これに複数の米メディアが反応した。ブルームバーグは「投資家が待ち望んできた」と伝え、NBCは眠れる民間資金の有効な活用法として解説している。

 

アセットリサイクリング(asset recycling)は、国や自治体などの公共セクターが保有する既存インフラを、民間事業者に売却または長期リースし、収益を新規インフラの整備に充てる手法だ。これによって公共セクターは、新たな借り入れをせずにインフラの整備が可能になる。オーストラリアで2014年から導入されたアセットリサイクリングでは、送電事業や港湾事業などが売却・リースの対象となり、収益が道路や鉄道などの新規インフラ事業に投じられた。地方政府が売却益を新規インフラ整備に充てる場合、インセンティブとして連邦政府が投資額の15%を補助金として支給する仕組みだ。

 

アセットリサイクリングは、トランプ政権下の2018年にも、インフラ投資資金の調達法として話題になった。日本でも、2017年に開催された未来投資会議のPPP/PFIの会合で、オーストラリアの事例を紹介している。アセットリサイクリングが従来のPPP/PFIと異なるのは、既存インフラの売却で得た資金を新規インフラに投じる「循環性」にある。老朽化したインフラを大量に抱え、新規投資や維持管理の資金調達に悩む国にとっては魅力的な方法だ。公共セクターが財政支出を抑制できるだけでなく、民間事業者も新たな投融資や事業参画の機会を得る可能性がある。公共性を有する資産の民間譲渡は長期運用が前提となるため、年金基金などの投資対象にもなりやすい。自治体のインフラが対象になるなら、そのときこそ地域金融機関の出番である。

 

ただし、この仕組みが普及するには課題もある。まずは公共セクターが、民間に売却・リースできるインフラ資産を用意しなければならない。しかもそのインフラは、民間が参画したくなるような収益性を伴う必要がある。民間のもうけは大きくなくてよい。長期に安定したリターンが期待できれば、手を挙げる事業者が出てくることは、これまでのコンセッション事業が証明しいている。もちろん、民間への資産売却に際して、地域の合意も需要だ。

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