米国の道路再建は有料P3とPABsを拡大して公的年金基金の活用を

バイデン政権のインフラ投資を補完するリーズン財団の政策提言

米シンクタンクのリーズン財団(Reason Foudation)が、資金提供不足に悩む公的年金基金を、老朽化した高速道路再建に活用する方策について提言している。運輸政策ディレクターのロバート・プール氏が指摘する主なポイントは以下の通り(一部、InfraBizが補足)。

  • 米国の2つの大きな公共政策課題は同時に解決できる。主要な課題の一つは、多くの州および地方の公的年金基金が深刻な資金提供不足であること。もう一つは、米国の高速道路や橋梁の多くが大規模な再建と近代化を必要としているが、各州がその資金調達に苦労していること。
  • バイデン政権の米国雇用計画(American Jobs Plan)は、政府がインフラプロジェクトに2兆ドルを投資するが、道路と橋梁は8年間でわずか1150億ドルにとどまる。議会によって任命された全国委員会が、州間高速道路システムの老朽化した舗装と橋梁の再建に今後20年間で少なくとも1兆ドルかかると推定した数字に比べると、十分でない。
  • 公的年金基金が高速道路の再建に関与している例はある。2005年に官民パートナーシップ(P3)を通じて75年リースされたインディアナ有料道路(インディアナ州)の現在のコンセッション会社は、豪州IFM Investorsによって組織された数十の公的年金基金が保有する。99年P3リースのシカゴスカイウェイ(イリノイ州)のコンセッション会社は、カナダ最大の3つの公的年金基金が保有している。
  • このような長期P3プロジェクトでは、コンセッション会社はインフラの運営・維持管理・改良・再建を担う責任があり、通常は政府の監視対象となる。インディアナ有料道路では、コンセッション会社が高速道路のほとんどの再舗装、サービスプラザの刷新、トラック駐車施設の増設を実施し、現在はEV(電気自動車)の充電施設を整備している。
  • 米国の公的年金基金は、空港、港湾、有料道路、橋梁など、収益を生み出すインフラへの信頼できる長期投資をますます求めている。ただし、年金基金の輸送インフラへの投資のほとんどは米国外である。年金基金は投資したいのだが、政府所有の空港、港湾、有料道路はほとんどが債務(Debt)で賄われている。海外では、多くの空港、港湾、有料道路が投資家に長期リースされており、米国年金基金の投資もほとんどがそれらの輸送インフラに向かっている。
  • 米国連邦法は、空港所有の政府に長期P3リース契約の締結を許可しており、プエルトリコはP3を通じてサンファン空港を変革した。しかし、高速道路分野では、老朽化した​州間高速道路の95%が無料であるため、通行料徴収による収入と自己資本利益率を確保する仕組みがP3リースに含まれない限り、年金基金の関心は向かない。議会は、通行料収入による州間高速道路再建に関する現在の3州対象のパイロットプログラムを50州すべてに拡大し、参加州が通行料収入によって老朽化した州間高速道路を再建できるようにすることで、この状況に対処できる。
  • 議会のもう1つの行動は、地方債の一種である免税の民間活動公債(PABs=Private Activity Bonds)の承認枠を拡大することだ。150億ドルの上限(すべて使用済み)を撤廃し、新規施設の建設だけでなく、既存インフラの再建と近代化にもPABsを利用できるようにすべきである。
  • これらの2つの制度変更、つまり州間高速道路に関するP3有料プロジェクトとPABs利用の拡大は、米国の老朽化した州間高速道路の改良と再建に、多額の公的年金基金を投資するための扉を開くことになる。
InfraBiz
関連サイト
リーズン財団のウェブサイト
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