土木学会は、全国1499市町村が管理する道路橋の劣化状況を3段階の色分けで評価した「道路橋の健康状態に関する市町村別評価」を公表した。1巡目(2014~18年度)の点検橋梁数の総計が50橋以上の市町村を対象に、同学会のインフラメンテナンス総合委員会インフラ健康診断小委員会が評価し、国に対して、全国一律の支援ではなく、橋梁が劣化しやすい地域の市町村への支援を手厚くする必要があることなどを提言している。
マッピング(図表)は、各市町村にある全ての橋梁の損傷度の平均を算定して健全度を順位付けし、色分けした。各色の内容は以下の通り。
- 青色:上位25%(損傷度が小さく健全な橋梁が多い)(375 自治体)
- 黄色:中位50%(749 自治体)
- 赤色:下位25%(損傷度が大きく劣化橋梁が多い)(375 自治体)
評価基準となる「損傷度」は、定期点検における市町村別の健全性診断結果から、判定区分Ⅱ(予防保全段階)、Ⅲ(早期措置段階)、Ⅳ(緊急措置段階)の違いを点数化し、それぞれの橋梁数を考慮して算出している。
図表■橋梁損傷度に基づいた市町村別の健全性評価
全国市町村の道路橋の健全性について、委員会は以下の分析結果を整理している。
- 地域によって損傷度の状況には顕著な違いがある。全くランダムなものではなく、ある種の地域的な特性が認められる。
- ある特定の地域(北海道、日本海側の東北、北陸、四国、九州東部)で、全国平均より損傷度が大きい市町村が多い。
- ただし、損傷度が大きい市町村と小さい市町村が隣り合う場合も多くあり、材料や環境条件以外の条件でも損傷度は影響を受けていると推測される。
- 東京、神奈川、大阪府など人口が多い都道府県内でも、損傷度が大きい市町村が存在している。
- 地域的な特性について、日本コンクリート工学会が公表した「アルカリ骨材反応(ASR)と塩害による複合劣化の可能性がある地域」と比較すると、今回の評価の損傷度が大きい市町村は、アルカリ骨材反応と塩害の重複地域と比較的一致する傾向がある。また、使用材料や環境の影響で、橋梁が劣化しやすい地域が存在することが推測される。ただし、そうした全般的傾向が認められるとともに、それだけでは説明できない面もみられ、自然科学的条件以外の要素も含めて、分析を続ける必要がある。
さらに、1巡目の点検・診断結果を踏まえて、以下を提言している。
- 使用材料や環境の影響で橋梁が劣化しやすい地域の市町村は、他地域より注意して維持管理を実施する必要がある。
- 市町村は地域特性を含めて状況の情報公開を進め、住民の理解や支援を得る努力が求められる。
- 国は全国一律の支援ではなく、橋梁が劣化しやすい地域の市町村への支援を手厚くする必要がある。
- 国は、損傷度評価の精度向上や将来予測のため、 橋梁としての健全度に加えて部材レベルの損傷なども診断し、データベースの充実を図って、その内容を速やかに公表する必要がある。
なお、今回の1巡目の点検・診断結果は、 橋梁の点検・診断が制度として始まる以前の状態を示すものであり、今後の経年的な劣化の進行とともに、管理者が劣化橋梁を健全な状態に戻すための取り組みも併せた結果として、2巡目(2019年度~)以降の経時的な推移がより重要になると考えられる。