2050年のカーボンニュートラルに向け、再生可能エネルギーをさらに拡大していくための議論が深まるなか、太陽光発電設備の設置場所を「屋上」や「水上」に求める事例が次々と出てきた。
三井住友ファイナンス&リース(SMFL)など3社は3月、自家消費型太陽光発電事業として国内最大級の設備が運転を開始したと発表した。設置場所は、愛知県田原市にある東京製鉄田原工場の製品倉庫棟の屋根だ。発電容量約6.4MWで、電力は工場で自家消費する。
東芝プラントシステムがEPC(設計・調達・建設)を担当し、東芝エネルギーシステムズが太陽光モジュールを提供。SMFLは設備をリースで提供するとともに、補助金の申請代表者として事業をまとめた。
土地の造成が不要
東京センチュリーは、屋根置き太陽光発電事業を展開する第五日本ソーラー電力合同会社(千葉市)に出資参画したと発表した。出資後の株主構成は、JFEエンジニアリング49%、東京センチュリー49%、第二電力2%。同社は工場や事業所の屋根を賃借し、太陽光発電設備を敷設する事業を全国273カ所、出力22MWの規模で展開している。屋根置き太陽光発電事業は、土地の造成が不要で環境負荷が小さい。
駐車場型の日本最大級は、岡山県瀬戸内市の岡山村田製作所だ。2020年に稼働した1期(駐車場1200台分、発電容量2.4MW)と、21年1月に稼働した2期(500台分、1.3MW)で、合計3.7MWの発電容量を誇る。裏面でも受光可能な両面発電パネルを採用し、設置面積当たりの発電効率を高めた。設備工事を受注したオムロン フィールドエンジニアリングが3月に発表した。
水上は固定資産税もかからない
水上に適地を求めるのは、20年に水上ソーラー合同会社(大阪市)を設立した日鉄物産、環境資源開発コンサルタント、積水化成品工業、スマートエナジーの4社。20年11月に稼働した兵庫県三木市の松田養鶏場中央池太陽光発電所は出力1MWで、電力は養鶏場内で自家消費する。4社はこのほど、水上太陽光発電事業を強化する意向を表明した。
水上太陽光発電設備は、ため池や湖沼などの水上空間に設置する。リリースによると、土地造成費や固定資産税が不要で、水冷効果によって発電効率の向上が期待できる。ため池は国内に約21万カ所あり、水上空間における太陽光発電の導入可能量約3万8800MWに対して、現在の導入量は約1%だという。
屋上や水上を活用する事例は以前からあるが、最近の発表は、将来の市場性を察知して事業展開を狙う企業によるものが多い。大規模な太陽光発電所の開発用地に限りがあるという課題を解消するために、屋上や水上が有効な選択肢になりつつある。