マイクロソフトが支援するDACスタートアップ Heirloom Carbon Technologies

LRI Energy & Carbon Newsletterから

米国カリフォルニア州にHeirloom Carbon Technologiesという名の直接空気回収技術(Direct Air Capture、DAC)のスタートアップがある。Heirloomの日本語訳は先祖伝来の宝、すなわち家宝である。同社はエンジニアであるShashank Samala氏によって2020年に設立され、これまでに5,763万ドルの資金を調達している[1]。マイクロソフトは既に同社の株主であるが、2023年9月に同社とDACとしては最大級のディールを結んだ。それは2億ドルで3万1,500トンの二酸化炭素を除去するというディールである (トン当たり635ドル)[2]。(マイクロソフトはDACのもう一つのスタートアップ、Climeworksともディールを結んでいるが、それは1万トンにしか過ぎない。)

Heirloomのテクノロジーの特徴は自然界で大気中の二酸化炭素が何年 (数百万年) もかけて石灰石に永久的に貯留される鉱化(Mineralisation)のプロセスを僅か何日というレベルに短縮したことである[3]。建屋の中で、以下のクローズドループのプロセスが繰り返される。

  1. 石灰石を粉砕して、それを(再生可能エネルギーによる電気で稼働する)炉(Kiln)で熱し、二酸化炭素と酸化カルシウム粉末に分解し、その二酸化炭素を永久に地下に貯留する。
  2. その酸化カルシウム粉末を水で水和させ、水酸化カルシウムをつくり、その粉末を大きなトレイに広げる。(許認可書類には材料の損失を防ぐために5%の湿気を保つとある[4]。)
  3. 3日程度でその水酸化カルシウム粉末は大気中の二酸化炭素を吸収して、石灰石となる。
  4. その石灰石を炉に送り、同じプロセスが繰り返される。

大気に晒し二酸化炭素の吸収を待つという、受動的なプロセスであるから必要となるエネルギー量は僅かで済むことになる。その反面、スケールアップがエンジニアリングの挑戦となる。

同社は既にカリフォルニア州トレイシー(Tracy)で商業プラントを運営している。プラント内には水酸化カルシウム粉末を入れた数百と思われる数の大きなトレイが間隔を空けて積み上がられている。それが何列もある。同社によればプラントの敷地1平方メートル当たり50トンの二酸化炭素の除去が可能である[5]。

Heirloomは同社のテクノロジーを使って2035年までに10億トンの二酸化炭素を大気中から除去する目標を掲げている。そして2035年までには同社のカーボンクレジットの価格はトン当たり100ドルを下回ると宣伝している[6]。同社のパートナーにはマイクロソフトの他、メタ、JPモーガン、マッケンジーなどが含まれている。

Heirloom、先祖伝来の宝、という名前の由来であるが、それはふんだんにあるものであるが、二酸化炭素を吸収するという重要な役割を果たす石灰石を指しているのではないかと想像される。

 

※この記事は、英国のロンドンリサーチインターナショナル(LRI)の許可を得て、LRI Energy &
Carbon Newsletterから転載しました。同社のコンテンツは下記関連サイトからご覧になれます。

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[1] https://forgeglobal.com/heirloom-carbon-technologies_stock/
[2] https://carboncredits.com/microsofts-200m-carbon-removal-deal-supercharges-heirlooms-dac-solution/
[3] https://cleantechnica.com/2021/12/08/interview-with-shashank-samala-founder-of-heirloom-carbon-technologies/
[4] https://www.cityoftracy.org/home/showpublisheddocument/15812/638225065048739066
[5] https://www.heirloomcarbon.com/
[6] https://www.heirloomcarbon.com/

津村照彦(LRI会長)
関連サイト
LRI ニュースレター エネルギー&カーボン
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