ドイツHOCHTIEFの2020年決算、豪州子会社CIMICの売上高が大幅減

売上高229.54億ユーロ(前年比11%減)、純利益は4.27億ユーロを確保

ドイツのインフラ総合会社HOCHTIEFの2020年売上高は229億5400万ユーロ(前年比11.2%減)、EBITDA(利息・税金・減価償却前利益)は17億300万ユーロ(同10%減)。株式の20%を保有するスペインAbertis(純利益3億6500万ユーロ)からの配分、マイナス1700万ユーロ(前年は1億2200万ユーロの貢献)を含めて、純利益は4億2700万ユーロ(前年はUAE子会社への出資撤退の影響などで2億600万ユーロの損失)となった。地域別に見ると、アジア太平洋地域の売上高の落ち込みが大きい(図表1)。

 

HOCHTIEFは、欧州各国の子会社やAbertis(出資比率20%)、豪州CIMICグループ(同78.6%)、米国のTurner Construction Company(同100%)、Flatiron(同100%)などの子会社を通じて、欧米やアジア太平洋に事業展開している(図表2)。一方で、HOCHTIEFの株式50.4%をスペインACS Group、18%をイタリアAtlantiaが保有している(図表3)。

 

図表1■決算概要

(出所) Investor Relations Company Presentation FY 2020 results

図表2■HOCHTIEFの子会社群

(出所))HOCHTIEFのGroup Report 2019等を基に作成

図表3■HOCHTIEFとAbertisの関係

(出所)関係各社のレポートを基に作成

 

Abertisは売上高が前年比24%減、純利益が同66%減

HOCHTIEFのコンセッション(PPP)事業は、HOCHTIEF Europeに属するHOT PPPのほか、Abertis、豪州CIMICグループのPacific Partnershipsを通じて展開している。

 

HOCHTIEF(出資比率40%)のほか、英国John Laing(同40%)、オランダDura Vermeer(同10%)、ベルギーBESIX(同10%)からなるGelreGroenコンソーシアムは20年1月、オランダの高速道路で12億ユーロのDBFOM(設計・建設・資金調達・運営・維持管理)契約を締結した。アーネム近郊でA15を12km延伸し、車線を追加してA12とA15を23kmにわたって拡幅する。契約には2044年までの運営・維持管理が含まれる。

 

スペイン、フランス、ブラジル、チリをはじめ、15カ国で8600km超の有料道路を運営・管理するAbertisの2020年の決算は低調だった。売上高は40億5400万ユーロ(前年比24%減)、EBITDA 26億2800万ユーロ(同30%減)、純利益3億6500万ユーロ(同66%減)。減収減益の要因は、COVID-19に伴う各国の封鎖と移動制限によるもので、3月中旬以降、第2四半期(Q2)にかけて交通量が急減し、通年の1日平均交通量は前年比21%減だった。その結果、HOCHTIEFの純利益に対するAbertisの貢献は−1700万ユーロだった。

 

一方、Abertisは20年6月、メキシコ最大の道路事業者の一つであるRed de Carreteras de Occidente(RCO)の株式76%を取得。RCOの株式53%に14億7700万ユーロを投じた(残りはシンガポールの投資会社GIC)。さらに12月には、Abertis とManulife Investment Managementが、米国バージニア州のElizabeth River Crossings(ERC、図表4)の全株式を「Macquarie Infrastructure Partners II+Skanska」から取得。AbertisはERCの株式55.2%に約10億ユーロを投じた(残り44.8%はManulife Investment Management)。コンセッションの残存期間は2070年4月までだ。

 

図表4■米国Elizabeth River Crossingsの概略図

(出所)Investor Relations Company Presentation FY 2020 results

 

豪州CIMICグループが鉄道PPPに参画

豪州子会社CIMICグループの2020年決算は、売上高が114億860万豪ドル、EBITDAが21億1610万豪ドル、EBIT(営業利益)が11億7960万豪ドル、純利益が6億2010万豪ドル。ただし、純利益に鉱業子会社Thiessの株式50%の売却益21億6440万豪ドル、Gorgon LNGプラント桟橋の訴訟に関する損失11億5040万豪ドルは含まれていない。

 

同社は、鉄道PPPプロジェクトに積極的に参画している。クイーンズランド州ブリスベンのクロスリバーレール(CRR)のPPP事業(2019年4月に54億豪ドルで受注)では、子会社のPacific Partnershipsがトンネル・駅舎・開発(TSD)のPPPを担うPulseコンソーシアムに49%出資。子会社のCPB Contractorsはトンネルと駅舎の設計・建設、UGLは機械・電気工事と24年間の保守サービスを担う。さらに、両社は他のパートナーとともに、CRRプロジェクトの一環としてRIS(鉄道統合システム)を受注している。

 

Pacific PartnershipsとUGLは、Momentum Trainsコンソーシアムの構成員(そのほかCAF、DIF Infrastructureで構成)として、ニューサウスウェールズ州の地域鉄道プロジェクトにも取り組んでおり、鉄道車両と保守施設の計画・建設・資金調達・維持管理を担う。運行開始は2023年の予定だ。さらに、Pacific Partnershipsが参画するNorthwest Rapid Transitコンソーシアム(そのほかMTR、CDPQ、Marubeni、Plenary Groupで構成)は、Sydney Metro City & Southwest線を含めるため、Sydney MetroプロジェクトのPPP契約(2014年~)を19年に、34年まで延長している。合計66kmの鉄道路線と31の地下鉄駅を運営・維持管理していく。

InfraBiz
タイトルとURLをコピーしました