ペロブスカイト太陽電池、インフラ・不動産の収益向上に期待

次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」の実用化に向けた取り組みが進んでいる。フィルム型の製品は、軽量かつ柔軟で、建物の外壁や窓、自動車のボディーなどに貼れ、直射日光が入らない場所でも効率よく発電できる点が特徴だ。実用化によって、インフラや不動産の収益を向上させる効果が期待されている。

桐蔭学園、東急、東急電鉄、横浜市の4者は、東急田園都市線・青葉台駅でペロブスカイト太陽電池の先行実証実験を2023年2月に実施。青葉台駅正面口改札前自由通路の屋内光の下で性能を確認した。東急電鉄は、結果を踏まえて建物や駅、高架橋、車両などへの活用方法を検討する。この実証には、東芝エネルギーシステムズがフィルム型ペロブスカイト太陽電池を提供した。同社は703cm2モジュールで発電効率16.6%を実現している。

東急電鉄青葉台駅自由通路における屋内光の下での実証

 

ビル外壁や下水処理施設でも検証

NTTデータは積水化学工業と共同で、フィルム型ペロブスカイト太陽電池の建物外壁での実証実験を開始する。まず、課題抽出を目的として、積水化学工業の開発研究所(大阪府島本町)の外壁に設置し、風圧を含めた構造安全性や設置方法を2023年4月から確認。2024年4月からは、NTT品川TWINSデータ棟(東京都港区)の外壁で、都心部での発電効率などを検証する予定だ。NTTデータの全国16カ所のデータセンターやオフィスビルへの導入をもくろむ。

NTT品川TWINSデータ棟 (出所)NTTデータ

東京都と積水化学工業は、ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けて共同研究に取り組む。2023年春から、森ヶ崎水再生センター(東施設)処理槽上部にある覆蓋の一部にフィルム型ペロブスカイト太陽電池を設置して、発電量や腐食耐久性を確認する。積水化学工業によると、屋外耐久性10年相当を確認し、30cm幅の製造プロセスを構築。発電効率15.0%を実現した。同社のペロブスカイト太陽電池については、JR西日本が「うめきた(大阪)駅」に導入することを明らかにしている。こちらは2025年春頃になる見通しだ。

フィルム型ペロブスカイト太陽電池と東京都森ヶ崎水再生センター (出所)積水化学工業、Google Earth

パナソニックは2023年2月、自社ウェブサイトに「太陽光発電がビルの窓と一体化する 次世代エネルギーの主役候補=ペロブスカイト太陽電池」を掲載。802cm2のモジュールで、変換効率17.9%を実現したことや、製品化に向けた取り組みが進展していることを伝えた。

 

課題は大型化、耐久性、コスト

ペロブスカイト太陽電池は、従来型の太陽光パネルが設置できなかった場所を発電スペースに変える。現時点での主な課題は、製品の大型化、屋外での耐久性、製造コストだ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はグリーンイノベーション基金事業で、ペロブスカイト太陽電池の開発に約200億円の予算を計上。発電コスト20円/kWh以下を目標に、6事業を支援している。

政府は10年間で150兆円のGX(グリーントランスフォーメーション)投資を目指す中で、ペロブスカイト太陽電池の実証を2023年から開始し、2025年に社会実装、さらに早期の大規模活用を目指すロードマップを描いた。経済産業省は、ペロブスカイト太陽電池などの需要の創出に向けて、FIT制度やFIP制度における新たな発電設備区分の創設を検討する。

 

ペロブスカイト太陽電池の実用化に向けた動向を、月次レポート「インフラ・グリーン・デジタル投資動向 2023年2月」に掲載しました。

InfraBiz
関連サイト
東急の発表
NTTデータの発表
積水化学工業の発表
JR西日本の発表
パナソニックの技術動向
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