洋上風力発電の進捗状況(更新2)――秋田沖・銚子沖で三菱商事グループ圧勝

経済産業省と国土交通省は2021年12月24日、再エネ海域利用法に基づく海洋再生可能エネルギー発電設備整備の促進区域である「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖」、「千葉県銚子市沖」の事業者について、それぞれ「秋田能代・三種・男鹿オフショアウィンド」、「秋田由利本荘オフショアウィンド」、「千葉銚子オフショアウィンド」を選定したことを発表した(図表1)。

いずれも三菱商事エナジーソリューションズ(旧三菱商事パワー)、三菱商事、シーテック(中部電力グループの総合設備会社)からなるコンソーシアムで、由利本荘市沖の事業では再エネ事業者、ウェンティ・ジャパン(秋田市)が加わる。

「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」の事業は、発電出力478.8MWで12.6MWの発電機(GE製)が38基。2028年12月の運転開始を目指す。公募参加者は計5者。三菱商事グループ以外の供給価格が17.0~27.0円/kWhだったのに対し、同グループは13.26円/kWh。事業実現性評価点もトップだった。

「秋田県由利本荘市沖」の事業は、発電出力819MWで12.6MWの発電機(GE製)が65基。2030年12月の運転開始を目指す。公募参加者は計5者。三菱商事グループ以外の供給価格が17.2~24.5円/kWhだったのに対し、同グループは11.99円/kWh。事業実現性評価点は2位だったが、価格点で大きく逆転した。

「千葉県銚子市沖」の事業は、発電出力390.6MWで12.6MWの発電機(GE製)が31基。2028年9月の運転開始を目指す。公募参加者は計2者。三菱商事グループ以外の供給価格が22.6円/kWhだったのに対し、同グループは16.49円/kWh。事業実現性評価点は他者にリードされたが、価格点で逆転した。

3事業とも、三菱商事グループの供給価格が圧倒的に低いことが勝因だ(図表2)。価格点については、事業実現性に関する要素の採点後に次の計算式、「価格点=120点×(最も低い供給価格/当該事業者の供給価格)」によって算出している。今回の供給価格の低さは、洋上風力産業界が2030〜35年の着床式発電コストの目標として掲げる8〜9円/kWhに近づく一歩となり、洋上風力発電が主電源として他の電源に引けをとらない価格競争力を持てることを意味する。事業性の面では建設工事や設備機器などの調達、20年以上の運営・維持管理にマネジメント能力を発揮して、コストを厳しく抑制することが求められる。今回の供給価格は、同時期の事業に対して発電機などの共同調達が可能になるなど、条件が有利に働いた面もあると考えられるが、”特殊解”だとしても他グループの価格に比べたその低さは、今後の各社の応募戦略にも影響を及ぼしそうだ。なお、3事業とも、Amazon.com、NTTアノードエナジー、キリンホールディングスをはじめとする協力企業と地域共生策を共同実施することで合意が得られている。

図表1■3海域の事業概要と公募状況

(出所)経済産業省、三菱商事のニュースリリースを基に作成

図表2■3海域における評価結果

(出所)経済産業省のニュースリリースを基に作成

 

秋田県八峰町及び能代市沖で事業者公募を開始

洋上風力発電事業における「各海域の進捗状況と計画・実施事業の発電容量」の図表3(初掲:2021年10月6日、更新1:同10月30日)について、下記の内容を更新した(図表中の赤字)。

  • 促進3海域(秋田県能代市・三種町・男鹿市沖、秋田県由利本荘市沖、千葉県銚子沖)で事業者が選定された。
  • 秋田県能代市・三種町・男鹿市沖の事業者は、秋田能代・三種・男鹿オフショアウィンド(三菱商事エナジーソリューションズ、三菱商事、シーテック)。
  • 秋田県由利本荘市沖の事業者は、秋田由利本荘オフショアウィンド(三菱商事エナジーソリューションズ、三菱商事、ウェンティ・ジャパン、シーテック)。
  • 千葉県銚子沖の事業者は、千葉銚子オフショアウィンド(三菱商事エナジーソリューションズ、三菱商事、シーテック)。
  • 「促進区域」である「秋田県八峰町及び能代市沖」の事業者公募が12月10日に始まり(締切2022年6月10日)、事業者選定のプロセスに入った。三菱商事グループが応募する公算も高いとみられる。

この結果、再エネ海域利用法に基づく指定・整理は、事業者選定済みが4区域、事業者公募中が1区域、「有望な区域」が7区域、「準備段階」が10区域。事業者を選定した再エネ海域の設備容量は合計1.705GW、計画中の設備容量は総計25GW超になっている。なお、図表中、事業者を選定した海域でも、環境影響評価の手続きを実施していた事業者は残した。ただし、計画設備容量の総計にはカウントしていない。

図表3■各海域の進捗状況と計画・実施事業の発電容量

(出所)経済産業省や環境影響評価手続きに関するウェブサイトなどを基に作成

 

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詳しくは、日経BPの紹介サイトをご覧ください。本レポート中、日本の洋上風力市場に熱い視線を送っている海外企業3社のインタビューが第4章に収録されています。企業名と目次見出しは下記の通りです。

  • Iberdrola(スペイン)「コミュニティーの一員として日本の洋上風力発電事業に参画したい」
  • Principle Power(米国)「日本の海域に適した浮体式洋上風力技術を提供できる」
  • RTE international(フランス)「日本の洋上風力発電事業でも高圧直流送電が支配的になる」

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関連サイト
経済産業省のウェブサイト
三菱商事のウェブサイト(1)
三菱商事のウェブサイト(2)
三菱商事のウェブサイト(3)
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