岸田首相がデジタルインフラ推進表明、PFI/コンセッションは?

第100代首相に就任した岸田文雄氏は10月8日、国会で所信表明演説し、地方を活性化するために「5G(高速通信規格)や半導体、データセンターなど、デジタルインフラの整備を進める」と述べた。インフラの老朽化対策とともに、高速道路、新幹線など、交通、物流インフラの整備も推進する。

2020年10月に発行した著書「岸田ビジョン  分断から協調へ」(講談社)には、「インフラ」という言葉が9カ所出てくる。「電気やガス、水道などといった社会インフラも、データを利活用しながらより効率的に運用しなければなりません」、(データ利用の前提となる)「インフラ整備、Wi-Fiや5Gの普及、光ファイバー網の整備は必須です」などだ。地方を支えるという趣旨で、「交通・物流インフラの整備も重要」とも指摘した。所信表明演説でのインフラに関する発言は、著書を反映した内容だ。

 

財政の単年度主義に疑問

著書では、財政に余裕がなければ災害対策も外交力強化もできないという姿勢を打ち出している。「財政の健全化を志向することが重要」、「国として財政健全化を目指しているという姿勢を不断に示していかなければ、いつか国内外の投資家に見限られ、日本円や国債が暴落する事態が心配されます」などと記した。一方で、長期的な計画がなければ投資や消費の活性化はないとして、財政の単年度主義に疑問を呈している。

経済政策では「公平な分配」「分配なくして次の成長なし」「新しい資本主義を実現していく車の両輪は、成長戦略と分配戦略」が持論。所信表明には「分配」が12回登場し、分配戦略を実現する柱の一つとして、財政の単年度主義の弊害是正を挙げた。しかし、コロナ禍で分配が先行するなかでの成長戦略の具体的な中身は、まだ見えてこない。

 

コンセッションへの言及は1回

エネルギー政策はどうか。所信表明では、「2050年カーボンニュートラルの実現に向け、温暖化対策を成長につなげる、クリーンエネルギー戦略を策定し、強力に推進いたします」と訴えた。著書では、「再生可能エネルギーを主力電源化し、原発への依存度は下げていくべき」と主張するが、現在の政策からさらに踏み込むような発言は見当たらない。

国会議事録によると、コンセッション方式への言及は過去に1回だけ。ただし、日本のコンセッションに関する発言ではない。外務大臣だった2015年3月の参議院外交防衛委員会で、「ニカラグア政府は、計画の実施、運営に関するコンセッションを中国企業に付与してはおりますが、中国政府の関与については明確ではありません」と、議員の質問に答えた。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)は、建設政務次官だった1999年11月の参議院国土・環境委員会の答弁で1度だけ出てくる。

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岸田ビジョン 分断から協調へ
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