2024年4月に結果が明らかになった長期脱炭素電源の初回オークション。蓄電池は落札109.2万kWに対して不落札が346.7万kWと激しい競争となった。落札者で目立つのは、海外で実績を積んだプレーヤーだ。BESS(Battery Energy Storage System)と呼ばれる蓄電池システムの日本での事業構築に、世界で活躍するインフラ投資会社が意欲を見せる。
11件を落札したヘキサ・エネルギーサービス合同会社は、台湾に本拠地を置くHEXA Renewablesの事業会社だ。HEXA Renewablesは世界的なインフラ投資会社である米I Squared Capitalが、アジアでの再生可能エネルギー事業を手掛けるために設立した。太陽光発電、風力発電、蓄電池システムを得意とし、台湾、日本、韓国、シンガポール、マレーシア、フィリピン、インドなどで事業を展開する。I Squared Capitalは世界で約6GWの再エネに投資している。
米Stonepeakとシンガポールに本社を置くCHCはCHC Japanによる4件の落札を受けて、日本におけるエネルギー貯蔵事業のプラットフォームを共同で構築すると発表した。今後5年間で1GWを目指す。Stonepeakはインフラや不動産などのオルタナティブ資産(代替資産)への投資会社として知られており、世界で開発中・運営中の再エネ案件16GW超を擁する。CHCは蓄電システム開発と電力データ管理の会社だ。CHC Japanは2023年、四国電力と共同で愛媛県松山市に蓄電所を建設すると発表した。
3件を落札したティーダ・パワー110合同会社は、カナダのカナディアン・ソーラーの再エネ開発会社だ。カナディアン・ソーラーは日本で早くから太陽光発電所を開発・運営してきた。傘下には上場インフラファンドのカナディアン・ソーラー・インフラ投資法人もある。落札を受けて「日本の蓄電池市場でのカナディアン・ソーラーの確固たる地位を裏付けた」とコメントを出した。2024年1月時点で、日本における同社の開発案件は蓄電池1.376GWh、太陽光発電213MWとなっている。
のぞみエナジーは2件を落札した。同社はインフラ投資会社である英Actisが、日本での再エネ開発のために2023年に設立した企業だ。のぞみエナジーは2027年までに陸上風力発電、太陽光発電、蓄電池で計1.1GWの目標を立てている。
落札は安価な提案の結果であり、企業の競争力を表している。日本勢はオリックスが最大容量の96MWを落札し、レノバは3件を落札したが、海外勢の強さが際立つ入札だった。