内閣府のPPP/PFI推進室は2024年1月、事業推進部会を開催し、分野横断型・複数施設型、広域型のPPP/PFIを促進する方向性を示した。財政のひっ迫に加えて、インフラの老朽化、働き手減少の視点から、少ない財源・人材での対応が期待できる官民連携が必要と判断した。
部会では、分野の異なる複数の公共施設を一括で民間事業者に管理委託する「分野横断・複数施設型」、市町村の公共施設の維持管理業務を都道府県に委託したうえで民間事業者が参画する「垂直連携型」、複数の自治体が協定に基づいて施設の建設・管理を民間事業者に発注する「共同発注型」などの例を示した。
政府の地方制度調査会が2023年12月に岸田文雄首相に提出した「ポストコロナの経済社会に対応する地方制度のあり方に関する答申」は、広域連携に関する政策を府省間で調整・連携することを求めた。自治体が連携して公共施設を集約化したり、共同利用したりすることの効果も指摘している。
こうした政策の背景には、宮城県の上工下水一体型コンセッション方式で、一定の効果が認められたこともある。同方式は上水道2事業、工業用水道3事業、下水道事業4事業の計9事業を一体化し、性能発注を取り入れて、運営を20年間、民間事業者に委託するものだ。従来方式と比べて約337億円の事業費削減効果を見込んだ。メタウォーターを代表とするコンソーシアムが運営権者に選ばれ、2022年4月から運営を開始。民間の提案によって、事業運営に関する情報を集約・蓄積するシステムや、遠隔地から広域を監視・制御するシステムを導入して新しい価値も生み出した。
国土交通省は既に、広域・複数・多分野のインフラを一体的にマネジメントする「地域インフラ群再生戦略マネジメント」に取り組んでいる。適切な事業規模の設定や、分野や自治体ごとに異なるインフラの管理手法の整理などに課題は残されているものの、今後は府省が連携し、自治体の垣根を越えて、さまざまなインフラをまとめて整備・運営する動きがいっそう加速することになる。
これを受けて民間事業者側には、長期にわたる広域・複数分野の事業を、どのような体制で運営するかという準備が必要になる。得意分野の異なる企業が連携し、国や自治体に代わって公共施設の整備・運営を改善する提案が求められる。