上場インフラファンド協議会が発足、市場の縮小から拡大・発展への反転なるか

東京証券取引所のインフラファンド市場に上場しているファンドの資産運用5社はこのほど、「一般社団法人 上場インフラファンド協議会」を設立した。上場インフラファンドの拡大・発展が目的だ。景気変動の影響を受けにくく、長期にわたって安定した収益を生むインフラアセットへの投資機会を提供する上場インフラファンドの円滑な運営を支援し、提言や投資家への啓蒙活動などを行う。

 

上場インフラファンドには厳格な開示ルールが定められており、投資家はファンドの特性やリスクを、公開された資料で容易に知ることができる。投資口が小口化され、上場市場で取引できることも魅力だ。銘柄によって異なるが、現状の投資口価格は10万円前後で、年換算の分配金利回りは6%前後。こうした特徴もあって、投資家に占める個人投資家の割合が高い。

 

市場規模が縮小

しかし最近は市場規模が縮小している。最盛期に7銘柄が存在していたファンドは、資産運用会社を支援していたスポンサー企業などによるTOB(株式公開買い付け)が成立した結果、2銘柄が上場廃止となり5銘柄となった。

上場廃止が相次いだのは、再生可能エネルギー発電の需要の高まりによって、スポンサー企業が傘下の上場インフラファンドに資産を譲渡するよりも、他社に売ったり自ら保有・運用したりする方が、より効率的なビジネスができると判断したからだ。上場インフラファンドの運用資産がFIT(固定価格買取制度)に基づく太陽光発電設備に偏っていることも、持続的な発展を妨げる要因となっている。FIT期限の終了と共に収益が落ち込むリスクがあるほか、FIT電源に対して行われる出力制御などへの対応が求められる。

 

拡大・発展への課題

加えて、税制優遇措置である“導管性”が、特例措置として時限的に扱われていることも、恒久の導管性を有するREIT(不動産投資信託)と比べて不利な制約となっている。先が見えない制度では、市場に対する投資家の期待が収縮し、ファンドの資金調達や設備取得も難しくなる。

日本の上場インフラファンドが発展していくためには、制度面の課題を克服することに加えて、資産を多様化していくことが必要だ。非FITの太陽光発電や風力発電、水力発電、さらには、蓄電設備、通信基地局、空港、道路、上下水道施設などのインフラに投資対象が広がることが望ましい。これによって、「投資を通じて、脱炭素化や社会課題解決に長く貢献したい」という投資家の期待に応えられるようになる。

InfraBiz
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