太陽光が2030年発電コスト最安の8.2~11.8円/kWh、電源別限界コストは最大

経済産業省発電コスト検証ワーキンググループは2021年8月、太陽光、風力、原子力、石炭、液化天然ガス(LNG)など、電源15種類の2030年における発電コストの精査結果を公表した(下図)。この発電コストは、LCOE(Levelized Cost Of Electricity、均等化発電原価)と呼ばれる。発電所を新設した場合の建設や運営にかかるモデル費用で、系統(送電網)への接続費は含んでいない。風力や太陽光を増やすと、天候によって発電できない事態に備える火力発電所をバックアップ用に確保するなどのコストもかかるが、こうした系統安定化費用も織り込んでいない。

分析の結果、太陽光発電の2030年時点のコストが1kWh当たり8.2~11.8円と、原子力(11.7円以上)より安くなる。原子力は2015年の試算では、2030年時点で10.3円以上だった。今回は安全対策費を上積みした結果、2020年実績の「11.5円以上」よりも増えている。火力(LNG、石炭)は、燃料費やCO2対策費を考慮して上昇傾向。洋上風力は2030年時点でなお26.1円であり、他の電源に比べると高い。

図表■2030年における各電源の発電コスト比較

(出所)経済産業省の資料を基に作成

電源別限界コスト(LCOE*)は太陽光、風力が高い

今回の分析では、電源別限界コスト(LCOE*)も試算している。LCOE*は、「当該電源の追加によって発生するコスト」と定義し、あるエネルギーミックスに対して各電源を一定量(限界的に)増加させたとき、電力システム全体で変化する費用を、当該電力を増加させた正味の発電電力量で除して求める。この評価によって、例えば、現状のエネルギーミックスに、太陽光を追加した場合に発生する火力の起動停止や揚水損失のコストを反映するなどして、電源別のコストを比較できる。

結果は、1kWh当たり、事業用太陽光18.9円、陸上風力18.5円、原子力14.4円、LNG火力11.2円、石炭火力13.9円などとなっている。現状のエネルギーミックスから政策的に導入比率を高めていく太陽光や陸上風力のLCOE*が高く、比率を落としていく火力のLCOE*が安くなる。

各電源のコスト(経済性)は単一の値によって示されるのではなく、エネルギーミックスの状況に応じて変化する。ある電源の導入量が小さい場合にはその限界費用は比較的安く、導入量が大きくなるにつれて限界費用は上昇する。特に、均衡点(最適なエネルギーミックスにおける導入量)を超えて導入を進めると、限界費用が著しく上昇するため、単一の電源に過度に依存するシナリオは、総コストの上昇を招く恐れがあることも示唆される。電力システム全体の評価には、LCOE*による評価が欠かせないとしている。

InfraBiz
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