愛知県は7月21日、愛知県スタートアップ支援拠点「ステーションAi」整備・運営事業の事業者にソフトバンクを選んだと発表した。事業はBT(建設・移転)+コンセッション方式で、施設の設計・建設後に所有権を県に移転する。運営期間は2024年10月から10年間。2者が応札した。
事業者選定委員会(委員長:山内弘隆一橋大学名誉教授)は、ソフトバンクを選んだ理由として、「海外とのネットワークの形成や活用、モノづくりとデジタルの融合」を挙げた。愛知県の大村秀章知事は、ソフトバンクの提案を次のように説明した。「ソフトバンクは10カ国23拠点がある。このネットワークを、すべてこのスタートアップに使う。ここで育てたスタートアップをどんどん海外に紹介していく。世界中からスタートアップを呼び集める。そこにはソフトバンクのファンドもある。リアルとリモート、バーチャルで1000社をめざしている」。
提案審査でソフトバンクは、170点満点中131.88点を獲得した。競合相手との差は3.48点と大きくない。審査7項目のうち、最も差が開いた「計画全体」の項目は、十分な業務実績や先進的な取り組みなどを評価ポイントとした。「維持管理計画」の項目では、陳腐化のおそれのある最先端設備について、具体的な更新計画があることも評価した。ソフトバンクは、世界最先端のスマートビルをつくる意気込みを示している。
設計・建設費として、県が事業者に支払うサービス購入料の入札価格は、低い方が高評価となる。ソフトバンクの提示額は税抜きで13億余りと、競合相手を7400万円ほど上回った。一方、県に対して事業者が支払う運営権対価は、高い方が高く評価される。ソフトバンクは県の予定価格と同じ2.55億円を提示。運営権対価を評価事項に含む「運営計画」の評価点は、競合相手の方が2点ほど上回った。対価も高かったとみられる。
競合相手の名称は非公表だ。選定委員会は、東京などでスタートアップ・エコシステムを形成してきた経験やノウハウをもつ企業だと記している。
愛知県スタートアップ支援拠点は、立地の良さで入居者が集まるオフィスビルではなく、オペレーターの能力が成果に直結するオペレーショナルアセットだ。審査結果からは、スタートアップを1000社集める誘致力や、それを巣立たせるための海外ネットワーク、情報発信力が特に評価されたことが伝わってくる。
<事業概要>
- 名称:愛知県スタートアップ支援拠点整備等事業
- 場所:名古屋市昭和区鶴舞1丁目
- 敷地面積:7331.11m2
- 建ぺい率:80%
- 事業方式:BT(設計・建設)+コンセッション方式
- 設計・建設、供用準備期間:2021年10月~2024年9月(3年間)
- 運営・維持管理期間:2024年10月~2034年9月(10年間)
- 事業範囲:統括マネジメント、設計及び建設、運営(トータルコーディネート含む)、維持管理、任意事業、開業準備業務
- サービス購入料(設計・建設費、税込み): 143億4833万933円
- 運営権対価最低提案価格(税込み):2.55億円
- 代表企業:ソフトバンク
- 協力企業:石本建築事務所名古屋オフィス(設計・施工監理)、フジタ(施工)、DMM.com(テック・ラボ運営)、SBイノベンチャー(スタートアップ支援)、シービーアールイー(維持管理)、トットメイト(託児施設運営)