「PPP/PFI推進アクションプラン」こう読む(2)再エネ活用

前回に続き、「PPP/PFI推進アクションプラン(令和3年改定版)」から、InfraBiz的視点で、いくつかの施策を紹介する(以下の青字部分はアクションプランや成長戦略からの抜粋)。

 

コンセッション事業

<水道:地方公共団体において今後の経営のあり方の検討(運営権制度に加え、広域化や多様な民活手法の活用を含む)が令和3年度末までに少なくとも30件行われるよう促す>

<下水道:数値目標6件は達成した。ただし、6件のうち実施方針の策定完了済みという手続きまで到達している案件は3件であるため、引き続き重点分野とし、6件の実施方針の策定完了の達成までフォローアップを続けるものとする。なお、6件の実施方針の策定完了までの目標期間を令和3年度末までとする>

コンセッション事業の重点分野のうち、水道、下水道、クルーズ船向け旅客ターミナル施設、MICE施設、公営水力発電などで、政府の掲げた目標が未達となっている。このうち、クルーズ船向け旅客ターミナル施設、MICE施設はコロナ禍の影響がある。

水道は、現状の21件を30件に増やす数値目標を掲げたが、ゴールは「今後の経営のあり方の検討(運営権制度に加え、広域化や多様な民活手法の活用を含む)」だ。これに対して下水道は、「実施方針の策定」を現状の3件から6件にする目標とした。

事業によって到達点が異なるのは、水道コンセッションに対する根強い反対や自治体の懸念、民間事業者の憂慮などがあることと関係している。アクションプランには、「重点分野は、公共施設等運営事業を基本とするが、民間事業者の事業意欲が現時点で必ずしも十分でない場合は、将来公共施設等運営事業へとつながる事業類型も対象とする」という記述がある。

公共施設等運営事業の主な進捗状況 (出所)内閣府

 

再生可能エネルギー拡大にPPP/PFI

<PPP/PFIの推進はSDGs(持続可能な開発目標)の実現にも寄与すると考えられるほか、2050年カーボンニュートラルの実現等に向けて、再生可能エネルギーの活用を一層推進するに当たり積極的にPPP/PFIを活用していくことが重要と考えられる>

政府の「2050年カーボンニュートラル宣言」以降、インフラ市場では脱炭素ビジネスを取り込む競争が激化した。アクションプランは、コンセッション方式で実績のある公営水力発電について、「今後の経営のあり方の検討(運営権制度に加え、民営化・民間譲渡等を含む)が令和4年度末までに少なくとも3件行われるよう促す」と記したが、自治体が現に稼げている事業を手放すのは難しいという見方もある。

再エネのPPP/PFIについては、国の規制改革の議論が同時進行しているため、具体的な方針が追いついていないのが実情である。裏を返せば、公的資産を利用した再エネ電源の開発・運営こそ、これからのPPP/PFIの有力分野だ。再エネで発電した電気がほしいという需要は日に日に強くなっており、政府も導入の拡大を望んでいる。空港、既存ダム、農業用水路、道路、河川などの公的インフラは、すべて再エネ発電の候補になる。民間事業者に求められるのは、公的資産を活用した再エネ電源開発のアイデアだ。

 

民間提案の積極的活用

<PFIに限らないPPPも含めた近年の民間提案の活用実態・課題(インセンティブの付与方法、民間提案の評価方法等の改善等)に対応した改定を行った「PPP/PFI事業民間提案推進マニュアル」について、公共施設等の管理者等に対し周知を図る>

国は、行政の効率化、公的財産の有効利用、収益化などの観点から、公共施設の整備をできる限り民間事業者に委ねることをすすめている。PFI法は、民間事業者からPFIを提案できる「6条提案」と呼ばれる制度を設けているが、提案を受ける自治体側の体制が整っていないと、優れた提案も日の目を見ない。

新しいマニュアルは、PFI法の6条提案とそれ以外の民間提案について、提案の受付、評価、事業化に向けた手続き、提案者への加点評価の考え方、随意契約の注意点などについて解説している。提案を出す側の民間事業者にも参考になる内容だ。

 

PFI推進機構の期限延長は見送り

<機構は、民間金融機関の補完的役割を担うことから、民間のインフラ投資市場が形成されることが想定されていた令和9年度末までがPFI法上の設置期限とされている。しかし、現状では、そうしたインフラ投資市場は未成熟であり、今後、地域におけるPPP/PFI事業を一層推進していくためには、機構が有する出融資機能やコンサルティング機能の活用が一層求められると考えられる。こうした状況を踏まえ、地域金融機関等との関係者から意見を聴取しつつ、機構の今後のあり方について、設置期限の延長も含め、検討を行う>

上記文中の機構とは、利用料金を徴収するPFI事業にリスクマネーを供給する目的で設立されたPFI推進機構(株式会社民間資金等活用事業推進機構)のことだ。2028年3月末で業務を終了する前提で設立された。その期限延長を検討すると書かれている。昨年のアクションプランにも同文があり、期限延長を含めた改正PFI法を先の通常国会に提出する予定だったが、見送られた。

期限延長が認められなければ業務を終了することになり、新たな投融資はできなくなる。PFI推進機構は黒字運営がなされているが、官民ファンドの存続の是非については、政府内にも様々な意見がある。予断を許さない状況がしばらく続く。

InfraBiz
関連サイト
内閣府「PPP/PFI推進アクションプラン(令和3年改定版)」
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