米国のインフラ投資におけるPABsの役割と活用拡大の課題

米国のインフラ投資において、従来の政府資金調達に代わるツールの一つであるPABs(Private Activity Bonds、民間活動債)は大きな役割を果たしてきた。しかし、現行のPABsは様々な種類、税制、量的制限のために混乱を引き起こしている。米リーズン財団(Reason Foundation)のコラム(筆者:シニア運輸政策アナリストのMarc Scribner氏)を基に、PABsの現状と高速道路プロジェクトで使用される場合にPABsが直面する問題について整理する。

連邦税法の下では、州と地方政府が発行する債券は、政府債またはPABsのいずれかに分類される。地方債と同様、国債の利息収入は免税である。対照的に、PABsの利息収入は商業債と同様、一般的に課税される。政府発行の債券は2つの民間事業化テストの対象となり、両方の条件が満たされた場合は、債券の利息収入は通常、課税対象となる。ただし、議会はPABsの一部利用について、免税としている。これらは「適格(qualified)PABs」と呼ばれる。インフラの議論に関連するのは、「免除施設債(exempt facility bonds)」と呼ばれる適格 PABsだ。内国歳入法(Internal Revenue Code)第 142 条では、下記の15 種類の免除施設債を規定している。

(1)空港、(2) ドックと波止場、(3)大量輸送通勤施設、(4)水供給設備、(5)下水道施設、(6)固形廃棄物処理施設、(7)住宅賃貸プロジェクト、(8)電気エネルギーまたはガスの現地供給設備、(9)地域の冷暖房施設、(10)有害廃棄物処理施設、(11)高速都市間鉄道施設、(12)水力発電施設の環境改善、(13)公的教育施設、(14)グリーンビルディングおよび持続可能な設計プロジェクト、(15)高速道路または地上貨物輸送施設

これらの 15 の用途のうち、以下の9つは州の年間使用量上限の対象となる可能性がある。大量輸送通勤施設、水供給設備、固形廃棄物処理施設(民間所有)、住宅賃貸プロジェクト、電気エネルギーまたはガスの地方供給、地域の暖房または冷房設備、有害廃棄物処理施設、高速都市間鉄道施設(民間所有。債券発行の 25% のみが上限に対して計上)。適格PABsの量的上限は年間生活費調整の対象となる。2021 年の各州の上限は、1 人あたり 110 ドルまたは 3億2500万ドルのいずれか大きい方で決定される。

さらに3施設には個別の上限が適用される。公的教育施設は、1 人あたり 10 ドルまたは 500 万ドルのいずれか大きい方が州の年間使用の上限となる。グリーンビルディングおよび持続可能な設計プロジェクトには総額20 億ドル、高速道路または地上貨物輸送施設には総額150 億ドルの上限が適用される。

高速道路利用向けにSAFETEA-LU(the Safe, Accountable, Flexible, Efficient Transportation Equity Act: A Legacy for Users)が2005年に再承認されて以来、PABsは高速道路の官民パートナーシップ(P3)において極めて重要だった。ほとんどのプロジェクトで、PABsは総事業費の20~30%の資金を提供する。過去15年間に、120 億ドルのPABsによって450億ドルのプロジェクトが実施された。PABs がなければ、これらのプロジェクトの多くは実現不可能だった。

ところが、高速道路使用のための適格PABsに上限である総額150 億ドルに達している。2021年5月時点で、運輸省(Department of Transportation)のアメリカ建設局(Build America Bureau)は、上限150 億ドルのうち 、ほぼすべてが発行または割り当てられたと報告している。議会が高速道路P3をプロジェクト実施の実行可能なオプションとして維持したい場合、納税者にも節約できる方法として維持したいのであれば、高速道路に対するPABsの上限を引き上げるか、廃止する必要がある。

 

 

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