「骨太の方針」の議論から読み説くインフラ・PPP

政府は5月25日、経済財政諮問会議を開催し、予算編成に向けた基本政策である「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)の骨子案について議論した。議長の菅義偉首相は、新型コロナ対策に最優先で取り組みながら、グリーン、デジタル、地方、子ども――の4つの課題に取り組む方針を示した。日本は今後、歳出改善の努力を続けながら、民間投資や対日直接投資を拡大していく。会議に出席した議員の発言や資料のから、インフラビジネスに影響しそうな取り組みを拾い出してみた。

経済財政の基本姿勢について、麻生太郎財務相は「プライマリーバランスの黒字化目標の達成と、国と地方が歩調を合わせて経済再生と財政健全化を進めていく必要がある」と話した。ここで問題になるのが資金の手当てだ。民間議員として出席した柳川範之・東京大学大学院経済学研究科教授は、「何といっても民間資金や民間のノウハウを積極的に活用するとことが重要だ」と述べ、PPP/PFI推進アクションプランを改定して大胆なKPI(成果指標)を掲げ、世界のトップランナーを目指すことを要望した。会議の資料には、上下水道の広域化、コンセッション拡大、包括的民間委託、地域での一括発注、などの案が盛り込まれている。

対日直接投資については、2030年に80兆円の投資残高を目指すことを確認した。20年の2倍の規模である。グリーンやデジタルが大きな受け皿になりそうだ。特に、「2050年カーボンニュートラル」実現の主役となる太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは有望だ。再エネの拡大に欠かせない送配電施設、デジタル化を支える通信施設、データセンターもニーズがある。西村康稔経済財政・再生相は「地域への投資推進体制の強化」を掲げており、スーパーシティやスマートシティとセットになった具体策が、誘致材料となる可能性も高い。

 

インフラ/PPPに関連しそうな「骨太の方針」資料の記述(抜粋)

■資料1-1:経済・財政一体改革の当面の重点課題 ~地方行財政、社会資本整備~(有識者議員提出資料)
・年内にPPP/PFI推進アクションプランを改定し、以下の取組について、大胆なKPIを掲げ、PPP/PFIにおける世界のトップランナーを目指すべき。
-抜本的な事業規模の拡大目標設定、コンセッションの分野目標の再設定。
-アクションプランの実行期間内での全自治体(広域連携を含め)での普及促進。そのための人口20万人未満の自治体への優先的検討規程5の導入、地域プラットフォームへの参画拡大。
-2022年度までに策定予定の上下水道広域化プランや、個別施設計画の進捗管理。上下水道の老朽化対策におけるPPP/PFI導入の優先的検討の実施。
・各自治体における公共施設等総合管理計画の2021年度中の見直しを通じて、デジタル化やグリーン化、包括的民間委託、地域での一括発注による効率化等の取組を強化すべき。

■資料3:国民の命と暮らしを守り、「新たな日常」を築くための社会資本整備の推進(赤羽臨時議員提出資料)
・インフラ等を活用した太陽光発電等の再エネ導入・利用拡大>道路を活用した太陽光発電
・カーボンニュートラルポート(CNP)の形成

■資料5:対日直接投資促進のための中長期戦略の検討状況(西村議員提出資料)
・対日直接投資残高を2030年に80兆円(現行40兆円を倍増)、GDP比12%とすることを目指す
・グリーン基金(2兆円)も活用しつつ、我が国へのグリーン投資を加速
・地域への投資推進体制の強化(自治体・経済団体・地銀・VC・投資専門家等から成る「直接投資ブロック会議」を創設)
・外国企業の視点で地域の投資誘致戦略を磨き上げ、JETROが専門家の配置等を通じ支援する地域ブランディング強化事業の展開
・海外企業招へいによる国内の大学・企業・自治体等のマッチングを複数年に渡り支援する地域投資カンファレンス事業の強化

■資料6:財政健全化に向けた建議の概要(麻生議員提出資料)
<総論>
・高齢化と現役世代の減少という構造的課題に直面する中で、新型コロナが発生。財政上の対応が、国民の生活・事業を守るために重要な役割を担ったのは事実だが、将来世代の負担はさらに増加。
・各分野における歳出改革の共通の方向性は、例えば行政の効率化と質の両立、民間資金の活用、EBPMの推進等。
<1.社会保障等:水道>
・ 小規模事業者が多数存在しており、経営基盤が脆弱。類似の構造的課題を抱えた国保同様、広域化を目指すべき。
<2.地方財政>
・公共施設等の適正管理については、PDCAサイクルを回して維持・更新費用の削減を確実に実現していくべき。下水道事業は、既存事業の単なる延命という視点を捨て、広域化・共同化を着実に進め、受益と負担の関係を明確化していくことが重要。
<4.社会資本整備>
・建設公債が特例公債残高の増加につながると捉えうること、インフラの維持管理コストの増大、受益者である後世代の人口減少を踏まえれば、今後、費用便益分析における適正な便益及び費用算定を徹底し、真に必要なインフラを見極めて、債務残高の抑制に努めるべき。あわせて、工期や費用の適正な管理を行うべき。
<6.グリーン>
・ESG投資等、民間の投資資金の活性化及び活用等を強化していくため、情報開示に係るガイドラインなどの整備を進めていく必要。

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