既存ダムの水力発電利用推進で合意、再エネ規制総点検タスクフォース

内閣府の「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」は5月24日、第9回の会合を開催し、既存ダムの発電利用を推進する方針を確認した。内閣官房水循環政策本部は、水力発電を含めた再生可能エネルギー導入に関する電源別の野心的な数値目標を9月までに設定する。

 

眠れる水力発電大国

日本にある1470のダムのうち発電用は390で、4分の3は発電に利用されていない。太陽光は夜間に発電できないが、水力は夜間も継続して発電できる安定供給性を備えている。タスクフォースの委員は、天候予測技術の進歩によって、既存ダムの容量を大きな追加コストなく発電用に利用できると指摘。「日本は“眠れる水力発電大国”」だとして、再エネ開発のさらなる上積みを求めた。

<タスクフォースの主な要望>
・河川法の目的に発電利用を明示する。
・既存ダムのかさ上げや容量の有効活用の可能性を分析し、発電利用を推奨する。
・発電機が設置されていないダムの数を把握し、発電機設置時期を明確化する。
・水力発電のコンセッションについて、PPP/PFI推進アクションプランに掲げた3件を早急に事業化する。
・公営水力に限らず、他の再エネについても、民間の資金・ノウハウを活用する。
・バックアロケーション(既存ダムに新たに発電設備を設置する場合に求められる負担金の原則)を減免または免除する。
・水上太陽光の導入を推進する。
・農業用水路を発電にも活用する「相乗り発電」を増やす。
・小水力発電の系統連系に必要とされる装置(逆変換装置、能動的方式の単独運転検出装置)の必要要件を見直す。
・水力発電用の水管に道路占用許可を与える。

農業用ダムにおける小水力発電も推進する。水力の発電利用だけでなく、ダムやため池など水に水上太陽光発電の導入を進めることでも合意した。

公営水力発電事業へのPFI導入も論点となった。経済産業省は、対象となる発電所は減価償却も終わっており、自治体に自ら所有すべき資産という考えがあることを紹介。これに対してタスクフォースの委員は、発電を公的な主体がやり続けるのは、設備更新や発電量増大という点でスピード感に欠けるとコメントした。

 

治水と再エネ導入の両立が大前提

これまでの再エネ規制総点検タスクフォースの会合では、規制緩和の要望に対して担当省庁が抵抗し、意見がかみ合わないことも多かった。今回の会合では、国土交通省をはじめとする担当省庁が大筋で前向きな姿勢を示した。

出席した河野太郎規制改革担当相は、水力発電の最大限の拡大の重要性を次のように説明している。

「水力発電は貴重な純国産エネルギーだ。しかし水力発電の設備容量は横ばいで、2030年の導入目標の達成も厳しい。地球温暖化による気候変動の影響で、自然災害が激甚化している。その原因となっている温室効果ガスを削減しなければ、災害激甚化を止めることができない。治水と再エネ導入の両立は大前提だ」

InfraBiz
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関連サイト
再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォースのウェブサイト
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