政府は2024年4月、安全保障戦略の一環で、平素から必要に応じて自衛隊・海上保安庁の航空機・船舶が民間の空港・港湾を円滑に利用できるよう、「特定利用空港・港湾」を指定した。指定したのは、7道県の5空港と11港湾(下図参照)。自衛隊・海上保安庁と設置管理者との間で、「円滑な利用に関する枠組み」を設ける。
特定利用空港・港湾は、空港の滑走路延長やエプロン整備、港湾の岸壁整備や航路整備(海底地盤の掘り下げ)、既存事業の促進、利便性の確保や機能の強化を図る。ただし、自衛隊・海上保安庁専用の施設を整備することはない。2024年度予算は370億円。内訳は、5空港の整備183億円、国管理4空港の維持管理39億円、11港湾が148億円。北九州空港は2023年12月、滑走路延長工事(現状の2500mから3000mに延長)に着手しており、2027年8月の供用開始を目指す。
九州地方ではそのほか、佐賀空港(九州佐賀国際空港)と新石垣空港でも滑走路延長の動きがある。佐賀空港では、民間運航会社による路線拡大、福岡空港の代替機能を目指して、佐賀県が滑走路を現状の2000mから2500mに延長する事業の環境影響評価の手続きを進めている。用地買収・造成から供用開始まで5年を見込む。一方、佐賀空港は陸上自衛隊V-22オスプレイの配備先になっており、空港の隣接地で防衛省による駐屯地整備事業が進行中だ。2025年6月までに隊庁舎や格納庫、管理棟が竣工し、同年度以降に運用開始の予定だ。新石垣空港については2023年12月、石垣市が沖縄県に対して、現状の滑走路2000mから2800mへの延長と空港機能強化・拡充を国に求めるよう、意見書を提出した。
東南アジアや東アジアに近いという地理的な優位さを有するとともに、安全保障強化の一翼を担う九州地方の空港は今後、特定利用空港・港湾を増やす方針もあり、機能の強化・拡充を図る計画が増えそうだ。
特定利用空港・港湾の位置図