G7気候・エネルギー・環境大臣会合が2023年4月15~16日、札幌で開催された。同会合のコミュニケ(共同声明)のうち、「エネルギー部門の移行」、「産業・運輸・建築部門の脱炭素化」に関する事項について、環境省が発表した「コミュニケの要点」から再エネや脱炭素化に関する項目を抽出し、一部、コミュニケ本文から加筆した。目標が明示された項目がある一方、各国の取り組みに配慮した確認や言及にとどまった項目まであり、内容の合意度には濃淡がある。
<エネルギー部門の移行>
- 省エネ: 「省エネルギー・ファーストの原則」を確認。電化や燃料転換、デジタル化を含めて省エネ規制を進化。
- 再生可能エネルギー: 各国の既存目標に基づいて2030年までに洋上風力を合計150GW、太陽光を合計1TW(1000GW)に増加して、再エネ導入拡大やコスト低減に貢献。太陽光、陸上/洋上風力、水力、地熱、持続可能なバイオマス、バイオメタン、潮力などの再生可能エネルギーの展開を加速。次世代技術(ペロブスカイト太陽電池や浮体式洋上風力発電、波力など)の開発・実装への投資。安全・持続可能で強靱な供給チェーンの開発。新技術導入に向けた国際評価基準の向上。浮体式洋上風力の革新と持続可能性に関する分析。送電網強化、スタンドアロンシステムやミニグリッドを通じたシステムの柔軟性の向上。蓄電システムや需要側管理を含むエネルギー貯蔵システムの利用改善。
(筆者注)洋上風力の各国の2030年目標は、英国50GW、米国30GW、カナダ30GW、ドイツ30GW、フランス18GW(2035年)、イタリア5GW、日本10GW、EU(英国を除く)60GWなど。
- 電力:2035年までに電力部門の脱炭素化の完全または概成、国内の排出削減対策が講じられていない石炭火力発電を最終的にはフェーズアウトさせるという目標に向けて、具体的かつ適時の取り組み。
- 水素・アンモニア: 水素・アンモニアが様々な分野・産業、さらに「ゼロエミ火力」に向けた電力部門での脱炭素化に資する点を明記。ブルー・グリーンといった色によらない「炭素集約度」の概念を含む国際標準や認証スキーム構築の重要性を確認。当該評価を提案したIEA(国際エネルギー機関)の報告書を歓迎。
- カーボンマネジメント:2050年ネットゼロに向けた脱炭素化の解決策として、e-fuelやe-methaneなどのカーボンリサイクル燃料を含め、CCS(CO2回収・貯留)およびCCU(CO2回収・利用)/カーボンリサイクル技術が重要となり得ることを確認。
<産業・運輸・建築部門の脱炭素化>
- 産業の脱炭素化: ライフサイクルベースで産業の脱炭素化を評価することの重要性を強調。鉄鋼生産および製品の排出に関して提案された新しい「グローバルデータ収集フレームワーク」の実施に向けて作業開始。
- バイオものづくり: 気候変動問題を解決する可能性を持つ技術として認識。
- 自動車: 2030年までの高度に脱炭素化された道路部門へのコミットを再確認。2035年までにG7の保有車両からのCO2排出を少なくとも共同で50%削減(2000年比)する可能性。水素、合成燃料・バイオ燃料などの脱炭素燃料への言及、バッテリーサプライチェーンの追跡性・持続可能性、バッテリーリサイクルなど持続的な脱炭素化への言及。
- 国際海運: 取り組みの強化。
- 国際航空: 長期目標達成に向け、持続可能な航空燃料(SAF)の導入促進を含む世界的な取り組みを加速。
- 建築物: 化石燃料から、ヒートポンプなどクリーンエネルギーへの移行推進。ライフサイクル全体での建築物の脱炭素化の重要性。
なお, 参加国・国際機関は、G7が日本(議長国)、カナダ、欧州連合(EU)、フランス、ドイツ、イタリア、英国、米国、招待国がインド(G20議長国)、インドネシア(ASEAN議長国)、アラブ首長国連邦(UAE)(COP28議長国)、国際機関が国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局、経済協力開発機構(OECD)、国際エネルギー機関(IEA)、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)、国際自然保護連合(IUCN)、持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)。