電気の燃料を運ぶ時代から、電気そのものを運ぶ未来へ――。
大型蓄電池の製造・販売や電気運搬船の開発・製造を手掛けるパワーエックス(東京都港区)のウェブサイトに掲げられたビジョンだ。同社は5月23日、資金調達や資本業務提携などに関するリリースを相次いで発表した。
パワーエックスは、コンテナ型バッテリーを複数搭載した電気容量222MWhの電気運搬船1号艇「Power ARK 100」を2025年までに完成させる予定だ。沖合に建設した洋上風力発電所で発電した電力を船で輸送するので、海底ケーブルを敷設する場合と比べて発電所稼働までの期間が短くなり、初期導入コストも安くなる。ケーブルの制約がないため、洋上風力発電所の設置エリアを沖に拡大できる可能性もある。
海底送電線と比較したときの電気運搬船のメリットとして、以下の項目を挙げている。
1 海に接する場所ならどこにも電気を輸送できる
2 設置&稼働開始までの時間が海底ケーブルよりも短い
3 送電先と送電タイミングを選ぶことができる
4 環境への影響を最低限に抑えられる
5 初期導入コストが海底ケーブルより安い
6 売電やグリッド゙への放電タイミングを自由に選択可能
7 災害時に強い
経済産業省や国土交通省の委員会は5月23日、再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電事業者の選定方法について、運転開始時期が早い提案を高く評価する考え方を示した。審査で優位に立つために、電気運搬船を採用するケースも出てきそうだ。
大型蓄電池工場建設などに41.5億円
蓄電池事業では、大型電池製造工場「Power Base」を国内に建設する。この建設工事や研究開発などに充てるため、Spiral Capitalと日本瓦斯をリードインベスターとする投資家から41.5億円を調達する契約を結んだ。これとは別に、日本郵船とは資本業務提携契約を、日本瓦斯とは資本提携を結んだと発表。三菱UFJ銀行や東京センチュリーは出資する。
パワーエックスの主要株主は次の通り。
Spiral Capital
日本瓦斯
今治造船
日本郵船
三井物産
三菱UFJ銀行
BEMAC
Japan Airlines & TransLink Innovation Fund(JAL Innovation Fund)
東京センチュリー
みずほキャピタル
未来創造キャピタル(みずほリースCVC)