GWEC(世界風力エネルギー会議)は2025年11月、白書「日本の洋上風力ポテンシャルの開放」を公表した。日本の洋上風力が直面する課題を分析し、市場のボトルネックを解消して業界を成長軌道に乗せるための戦略的な道筋を提示している。
日本の洋上風力開発に関する制度枠組みを強化し、今後の公募ラウンドの実効性と競争力を高めることを目的とした短期的・長期的な提言は下記の通り。
- 短期的な提言:法改正を伴わずに実施可能な改善策に焦点を当て、ラウンド1の再公募(三菱商事・中部電力が撤退した秋田県沖・千葉県沖の3区域)およびラウンド4に向けた対応を重視する。
- 長期的な提言:持続可能な市場発展と投資家の信頼確保を目的とし、ラウンド5以降を見据えた戦略的な制度改革を構想する。
具体的な内容として、洋上風力発電を安定的かつ大規模に導入していくために日本は以下の3つの重要分野に取り組む必要があると指摘している。
(1) 公募制度の見直し:評価基準の最適化を含むタイムリーな見直しが洋上風力の導入拡大を加速する鍵となる。
- 官民(事業者・風車メーカー・施工業者・投資家などの関係者を含む)の対話を通じたタイムリーな制度改革〔短期〕
- 評価基準の最適化(価格点および非価格点の設定の見直し、評価委員会の人選の見直しなど)〔短期〕
- 日本版セントラル方式の最適化(調査内容や実施タイミングについて事業者・調査会社・認証機関を含む関係者との見直し)〔長期〕
- 領海内への2段階公募制度(海域占有権とFIT/FIPなどの収益支援を分割して実施)の導入〔長期〕
(2) オフテイクメカニズムの検証:上限価格の見直しや金融機関からの融資をより受けやすいスキームへの移行といった改善によって、公募要件を市場実態に即したものとする。
- 市場の実勢値を反映した入札上限価格(適正な利益水準を上回る値)・下限価格(損益分岐点に近づけた値)の設定 〔短期〕
- FIPからFITへの移行、あるいは双方向型CfD(差額契約決済制度)の導入 〔短・長期〕
- 市場経済への円滑な移行のためのコーポレートPPA市場の拡大〔短期〕
(3) その他のボトルネックの解消:認証、出力抑制、サプライチェーンの見通しに関する課題解決が投資を促進し、地域経済を発展させるために不可欠である。
- 認証要件の明確化(評価基準の標準化)とリスクベース評価制度の導入〔長期〕
- 運転開始日に基づく目標の導入による国内サプライチェーンへの投資促進〔短期〕
- 出力抑制の最小化と補償制度の導入〔短期〕


