Caldera社は2017年にイングランド南東、Hampshireに設立された蓄熱システムのメーカーである。同社のシステムは電気をそのままバッテリーに貯めるよりも、熱にして貯めておく方が、設備費は安いことを証明したシステムである。同システムは高温の蒸気を使用する、食品、製薬、繊維、製紙などの産業をターゲットとしている。同システムのコアのテクノロジーは世界で初めて火山岩と再生アルミニウムを使って作り出された蓄熱マテリアルである。この蓄熱マテリアルは高いエネルギー密度をもち、エネルギーを通しやすく、耐久性に富み、コスト効率が高い特徴をもっている。
同社の蓄熱ボイラーシステムは次の3つのコンポーネントから構成されている[1]。
- ヒートセル(Heat Cell):特許取得済みの畜熱マテリアルのブロックが真空断熱チャンバーに収められている。それらのブロックは電気によって直接加熱される。熱貯蔵マテリアルにはコイルが埋め込まれており、必要に応じて、そのコイルに純水を注入することによって、熱エネルギーを蒸気として抽出できる。
- 蒸気発生器(Steam Generator/Steam Plant): 標準パッケージの熱交換器によりヒートセルで生成された蒸気を更に加熱した蒸気を生成する。熱水、熱風、熱油としてのアウトプットも可能。供給圧力は最大16バール。
- コンパクトサブステーション(Compact Substation):工場で組み立てられ、現場で設置されるパッケージで、現場の中電圧リングメインから電力を受け取り、ヒートセルの負荷を管理する。中電圧を適切な低電圧に変換し、ヒートセル等の機器で使えるようにする。
システムはモジュール化されており、必要な数のヒートセルを設置することができる。
- 名目貯蔵容量: 5.3 MWh
- 最大チャージレート: 1.80 MWe
- チャージ効率: 99%
- 名目運用ディスチャージレート: 1.30 MWth (2 t/h)
- ブーストモードディスチャージレート: 2.60 MWth (4 t/h)
- 最小ディスチャージレート: 32.5 kWth (50 kg/h)
- スタンバイ熱損失率 :4.8% / 24 h
- 往復効率:98%
- 設計寿命 :20 年
- 最大高さ(ヒートセル):9.0 m
- ヒートセル設置重量:82t
Caldera社は2022年から2023年にかけて英国政府から総額80万ポンドと430万ポンドの補助金を獲得し、技術開発そして実証ユニットの設置を進めてきた。2024年には、クラウドファンディングを通じて150万ポンドの資金を調達し、産業用蓄熱ボイラーシステムの実証ユニットを製造し、1MWeのチャージと1000kg/hの蒸気ディスチャージの目標を達成した[3]。今後、欧州内で商業ユニットの設置を展開していくことになる。現時点ではその他の地域での活動予定はない。
※この記事は、英国のロンドンリサーチインターナショナル(LRI)の許可を得て、LRI Energy &
Carbon Newsletterから転載しました。同社のコンテンツは下記関連サイトからご覧になれます。
[1] https://www.caldera.co.uk/wp-content/uploads/2024/06/Storage-Boiler-Data-Sheet.pdf
[2] https://www.caldera.co.uk/wp-content/uploads/2024/06/Storage-Boiler-Data-Sheet.pdf
[3] https://www.caldera.co.uk/about/