上場インフラファンドの転機(2)利益分配重視への方針変更

直近決算での注目トピックは、カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人の運用方針変更である。将来、FIT(固定価格買取制度)が終了することに備え、利益超過分配金を実質的に廃止し、1口当たり利益分配金の安定的な成長を目指す方針を打ち出した。

分配金は純利益に基づく利益分配金と、それ以外の利益超過分配金で構成される。利益超過分配金は、主に会計上の費用にあたる減価償却費の一部を投資家に分配するものだ。カナディアンは予想分配金に利益分だけを反映し、利益超過分を含まない方針とした。これを受けて、2024年12月期の1口あたり分配金予想額を従来の3775円から3066円に見直した。元々、分配金総額に占める利益分配金の割合が他の銘柄と比べて高いファンドだったが、利益分配重視の方針をより鮮明にした。とはいえ、利益超過分の完全な廃止ではない。変更後は継続的な分配を実施しないという説明である。

今後は利益超過分を手元資金として、リパワリング(既存発電設備の更新などによって発電量を増加させる手法)、蓄電池導入、FIP(市場での売電価格に一定の補助額が上乗せされる制度)案件やコーポレートPPA(電力購入契約)案件の取得、自己投資口取得などに充てる。短期的に分配金は減少するものの、中長期的には投資主価値の向上に結びつくとの考えだ。新しい中期経営計画では、決算時点で970億円の資産規模を2030年に3000億円とする目標も掲げた。

カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人の資料を基に作成

カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人の資料を基に作成

利益分配を重視したファンドは過去にもある。スポンサーのTOB(株式公開買い付け)で2023年に上場廃止となったタカラレーベン・インフラ投資法人は、分配金に占める利益分配金の比率が約9割と高い銘柄だった。その理由を次のように説明していた。

「本投資法人は、利益を超えた金銭の分配(出資の払戻し)額の目途を設けることはせずに、投資主価値向上に向けた戦略的な再投資を行うために本投資法人が妥当と考える金銭を留保し、戦略的な再投資として新規物件の取得等を行います。本投資法人は、かかる再投資を重視し、純利益に基づく分配金の最大化を目指すことが、最終的には、本投資法人、ひいては投資主の利益に資するものと考えています」。

カナディアン・ソーラー・インフラ投資法人の戦略が、投資家にどう評価されるのかが見どころである。

InfraBiz
関連記事
上場インフラファンドの転機(1)天候不良や出力制御で予想比減収減益
上場インフラファンドの転機(3)投資口価格下落と利回り上昇
関連サイト
インフラ・グリーン・デジタル投資動向 2024年8月
タイトルとURLをコピーしました