宮城県の上工下水コンセッション、メタウォーターグループが優先交渉権

前田建設グループが次点、JFEエンジグループは失格

宮城県は3月15日、水道用水供給、工業用水道、流域下水道の3事業を一体にした上工下水コンセッション事業の優先交渉権者として、メタウォーターを代表とする10社グループ(下表Cグループ)を選んだと発表した。一体型コンセッションは人口や県職員の減少を背景に、持続可能な水道経営を確立することを目的として導入した。

 

SPCとは別に運転管理・維持管理の会社を県内に設立

メタウォーターグループは、メタウォーター34.5%、ヴェオリア・ジェネッツ34%、オリックス15%、日立製作所8%などの比率で出資する特別目的会社(SPC)を設立。県と実施契約を結んだ後、2022年4月から事業を開始する予定だ。事業期間は2042年3月までの20年間となっている。

次点は、前田建設工業を代表としてスエズウォーターサービス、東芝インフラシステムズなどが構成員のBグループ。JFEエンジニアリングを代表として東北電力、三菱商事、日本政策投資銀行などが構成員となったAグループは失格した。

審査結果の点数を見ると、メタウォーターグループは、改築・修繕、危機管理、地域貢献といった項目で高得点を得た。なかでも高く評価されたのが、経営・技術企画・改築を担うSPCとは別に、運転管理・維持管理の会社を県内に設立する点だ。審査委員会は、「安定的な事業の運営と雇用創出を図る体制」と評価した。

次点の前田建設グループは、下水道事業に係る改築費用の提案額が最も安く、この項目で高い得点を得たものの、総合点でメタウォーターグループに及ばなかった。

 

失格理由は一部下水道事業の突出した損失

JFEエンジニアリンググループが失格となった理由は、審査項目の一つである収支計画が標準未満と判断されたからだ。審査講評は、「一部の流域下水道事業において事業期間を通して突出した損失を計上する計画であった。個別事業ごと総括原価の考え方に基づいた提案となっておらず、個別事業ごとの健全運営に懸念が残る」と記した。

これは、このコンセッション事業が9事業個別に運営権を設定することと関係している。同グループの提案は、下水の2事業で多額の赤字が累積する計画になっており、審査委員に「20年間の事業継続ができない」=「標準未満」という印象を与えたようだ。

優先交渉権者選定基準によると、「標準未満」が「標準」と評価されるためには、想定されるリスクへの対応方法を明確に示す必要がある。「赤字だからこうする」という対応が、審査委員にうまく伝わらなかったことも、失格の理由と考えられる。ここが「標準」と評価されていれば、JFEエンジニアリンググループは総合点で前田建設グループを上回り、次点になっていた。

 

県が実施する場合と比べて336億円削減

期間中の事業費総額は、県が自ら実施する場合が約3314億円。優先交渉権者の提案に基づくと約2977億円となり、336億円(10.2%)削減できる見通しだ。

今回の応募者のうち、ヴェオリア・ジェネッツ、オリックス、東急建設は浜松市の下水道コンセッション事業の運営権者だ。JFEエンジニアリングも同事業に参画。前田建設や東急は、仙台空港コンセッション事業の運営に携わっている。

 

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