「2030年の年間CO2貯留量600万~1200万t」目標に先行する民間グループ

経済産業省はCCS(CO2回収・貯留)長期ロードマップ検討会で2023年1月、「CCS長期ロードマップ最終とりまとめ(案)」を示した。2050年時点で年間1.2億~2.4億tのCO2貯留を目標に、2030年までの事業開始に向けた事業環境(コスト低減、国民理解、海外CCS推進、CCS事業法)を整備し、2030年以降、CCS事業を本格的に展開する。そのために、モデル性のある先進的CCS事業を支援し、2030年までに年間貯留量600万~1200万tの確保にめどをつける。この貯留量を20年間積み上げると、2050年の目標量となる。

同検討会では、4グループのCCS事業への取り組みが示された。

JX石油開発、ENEOS、電源開発は合弁会社「西日本カーボン貯留調査」の設立を決定した。合弁会社は2030年のCO2圧入開始を目指す。ENEOSとJパワーの排出源が立地しCO2貯留ポテンシャルが見込まれる西日本地域で、CO2貯留候補地選定のための探査・評価などの事業化に向けた準備を推進する。

出光興産、北海道電力、石油資源開発(JAPEX)は、北海道・苫小牧エリアでCCUSの実現に向けた共同検討を開始する。苫小牧エリアは、3社の事業拠点を含む多様な産業が港湾周辺を中心に集積していることに加えて、3社も参画する日本CCS調査が国のCCS実証試験に取り組むなど、カーボンニュートラルへの取り組みが先行している。 今後は、苫小牧エリアの複数の地点をつなぐハブ&クラスター型CCUS事業を2030年度までに立ち上げることを視野に、CO2排出地点とCO2回収設備、CO2輸送パイプラインに関する技術検討、CO2貯留地点の適地調査を中心に、具体的な調査・検討を進める。CO2利活用についても、具体的な検討を進める予定。

伊藤忠商事、三菱重工業、INPEX、大成建設は、国内のCO2排出事業者を対象に、船舶輸送を用いた大規模広域CCSバリューチェーン事業の実施可能性を検討するために、共同スタディの実施に関する覚書を締結した。素材産業をはじめとする電化・水素化等だけでは脱炭素化の達成が困難と想定される産業(Hard-to-Abate産業)等から排出されるCO2の分離回収・出荷・船舶輸送・貯留に関する共同事業化に向けたスタディを進めるとともに、国内におけるCO2貯留候補地の選定作業を実施する。

一方、日本製鉄、三菱商事、ExxonMobil Asia Pacificは、豪州などの海外アジアパシフィック圏内でのCCS、およびCCSバリューチェーン構築に向けた共同検討に関する覚書を締結した。3社は日本製鉄の国内製鉄所から排出されるCO2の回収に関する調査や必要な設備開発の評価を実施し、ExxonMobil Asia Pacificによる豪州、マレーシア、インドネシアをはじめとする海外アジアパシフィック圏でのCO2貯留先の調査、三菱商事による海外へのCO2輸送およびCCSバリューチェーン構築に向けた評価を実施する。

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