大分県がこのほどまとめた「大分空港・宇宙港将来ビジョン」は、「陸・海・空そして宇宙につながる唯一無二の空港へ」というキャッチフレーズを掲げた。国土交通省は、大分、新潟、小松の3空港を、地元自治体の意向に基づき、コンセッション導入に向けた手続きを開始する空港と位置づけている。
200万人がコロナ禍で56万人に
国が管理する大分空港は、国東市に位置する3000mの滑走路を有する海上空港だ。県は将来ビジョンに、宇宙へ行くための離着陸場となる宇宙港(スペースポート)と、海上アクセスのためのホバークラフトという独自の切り口を織り込んだ。
宇宙港は、有人宇宙旅行など、将来的な輸送ビジネスに対応するための新しいインフラ機能だ。アジアにおける宇宙ビジネスの中核拠点として、宇宙人材の育成も担う。県は2020年、米小型人工衛星打ち上げのVirgin Orbitと、大分空港の水平型宇宙港活用に関する提携を発表。2022年には、米Sierra Spaceや総合商社の兼松と協定を結んだ。宇宙ステーションと地球をつなぐ宇宙往還機の活用を検討する。
空港アクセスの充実では、ホバークラフトによる海上からのアクセスを実現する。大分駅から大分空港まで、空港バスや鉄道を使うと60~70分。これがホバークラフトを利用すると、大分市内から空港まで半分くらいの時間になる。年間30~40万人の利用を想定し、2023年度中の運航開始を目指す。県が船舶を所有し、民間事業者が運航を担う「上下分離方式」で事業化する計画だ。
こうした戦略も踏まえて、乗降客数の目標を、10年後の2032年度に約260万人(国内線230万人、国際線30万人)、2050年度に約320万人(国内線280万人、国際線40万人)と設定した。2018年度の200.2万人(国内線186.5万人、国際線13.7万人)からすると実現可能性のある数字に見える。しかし、この空港もコロナ禍で利用者が減り、2020年度56.0万人、2021年度89.6万人となっている。
コンセッション成立に三つの論点
民間事業者の関心はどうか。国が実施したコンセッション導入可能性調査では、参画意欲を示す民間企業からの回答が多くあった一方で、新型コロナウイルス感染症の影響から、事業の将来性を懸念する回答もあったという。
こうした状況も踏まえて国の報告書は、コンセッション成立のための三つの論点を示した。
①独立採算型に限らず、国が運営費用の一部を負担する混合型スキームも含めた検討が必要
②コロナ禍のような需要変動リスクを分担するスキームが必要
③宇宙港構想が空港運営にどう影響するのかの整理が必要
大分県は、温泉の源泉数と湧出量で「日本一」を誇る。県は、こうした観光資源も集客材料としながら、県民や地元政財界との意見調整を踏まえて、コンセッション事業化の気運を探る。スケジュールは未定だ。