英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省 (BEIS) は2022年7月、Contracts for Difference(CfD、差額決済契約)スキームのラウンド4の結果を発表。同スキームで、潮流発電プロジェクトを初めて選定した。潮流発電は、潮汐流(潮汐による海水の移動)が持つ運動エネルギーを電力に変える発電方法だ。
今回、4つのプロジェクトが選定され、ストライクプライス(特定の脱炭素技術への投資コストを反映した電力価格)はいずれも、178.54ポンド/MWh(24.4円/kWh)。ストライクプライスはインフレ指数に連動し、参照価格(電力の平均市場価格)との差額が稼働後、15年間支払われる。
潮流発電プロジェクトの選定状況
4プロジェクトのうち、MeyGenはスコットランドの北東端から2kmの沖合で計画されている世界最大の潮流発電プロジェクト。潮流発電事業者 Simec Atlantis Energy(SAE)が2010年に英国クラウン・エステートとリース契約を結んで以降、フェーズ1では、SAE子会社のMeyGenが2018年から25年間の運営(6MW)に入っている。フェーズ2では、SAEが80MWの潮流発電容量を設置するための許可や送電容量を既に有している。CfDスキームで選定されたMeyGenの28MW分は、2027年までに稼働させる予定だ。さらにフェーズ 3として、SAEは最大398MWの潮流発電容量の設置が許可されている。
なお、環境省の事業として、2016年から九電みらいエナジーと長崎海洋産業クラスター形成推進協議会が取り組んでいる奈留瀬戸(長崎県五島市)での潮流発電実証事業で、2021年1月に設置された潮力発電機がSAE製(500kW)だ。2021年5月に経済産業省が実施する電気事業法に基づく使用前検査に合格している。
4プロジェクトのうち、Orbital Marine Eday 1(2.4GW)とOrbital Marine Eday 2(4.8GW)は、スコットランドの再エネ企業 Orbital Marine Powerの子会社 Orbital Project 3 とOrbital Project 4 がそれぞれ、スコットランドのオークニー諸島〔エディ島沖にある欧州海洋エネルギーセンター(European Marine Energy Center)のテストサイト〕で手掛ける。
両プロジェクトで、Orbital Marine Power製の浮体式潮力発電機「O2」が、合計7.2MWの電力を供給する。同サイトでの他のO2と合わせると、総容量は9.2MWになる。2024年初頭までに資金組成を完了し、2027年までに稼働開始する予定だ。Orbital Marine Powerは2021年7月からオークニー諸島にO2を設置し、英国の電力網に低炭素電力を供給している。O2は、海底設置型ではなく、海面近くで潮流や川の流れを捉えて発電するのが特徴だ。
さらに、ウェールズのアングルーシー島沖に展開しているMorlaisプロジェクトで、スペインの潮力エネルギー開発事業者 Magallanes Renovablesの子会社 MAGALLANES TIDAL ENERGYによるプロジェクト(5.62MW)が選定されている。2026年までの稼働開始を目指す。Magallanes Renovablesはフランス企業と並んで、Morlaisプロジェクトに参画する事業者の1社。2021年2月から、オークニー諸島(欧州海洋エネルギーセンター のテストサイト)に潮汐プラットフォーム「ATIR」(2MW)を設置し、潮力技術を検証している。ATIRは、造船で採用されるモジュラー構造と風力エネルギー技術の応用が特徴だ。