イタリアの道路・空港運営会社Atlantiaの2020年決算は、売上高83億ユーロ(1兆700億円、前年比28%減)、EBITDA(利払い・税引き・減価償却前利益)が37億ユーロ(同35%減)となった。EBITDAの減少は、交通量のパフォーマンス(収入が28億ユーロ減)や、道路運営子会社Autostrade per l’Italia(ASPI)による維持管理コストの増加(2億ユーロ)が反映されているが、Covid-19パンデミックの影響に対してグループ会社が講じた運営コストの削減措置によって一部相殺されている。
Atlantiaグループは、子会社のASPIとAbertis Infraestructuras(スペイン)を通じて国内外11カ国の道路コンセッション事業に参画している(図表1)。ASPI(Atlantiaの出資比率88.1%)はイタリア全土の約7000kmの高速道路網のうち3020km、Abertis(同50.4%)はスペインで1105km、フランスで1768km、ブラジルで4321kmなどの有料道路を運営。個別道路の特別目的会社(SPV)の運営道路も含めると、世界で約1万3000kmの道路運営に参画している。
Atlantiaは空港コンセッションにも参入し、子会社のADR(Aeroporti di Roma)とACA(Aéroports de la Côte d’Azur、フランス)を通じて運営事業を展開する(図表1)。ADR(出資比率99.4%)はローマのフィウミチーノとチャンピーノの2空港、ACA(同38.7%)はフランスのニース、カンヌマンドリュー、サントロペの3空港を運営する。
図表1■Atlantiaのグループ構成
橋梁事故の和解合意は34億ユーロに
2020年の道路ネットワークの交通量は、イタリア27.3%減、スペイン30.8%減、フランス24.6%減、チリ26.3%減、ブラジル8.8%減、メキシコ12.0%減。空港の旅客数は、ADR(ローマの2空港)で76.8%減、ACA(フランスの3空港)で68.4%減となった。
決算はCovid-19による交通量・旅客数の大幅減の影響を反映しているが、コスト削減や投資延期などの措置によって部分的に相殺されている。2018年のジェノバでの橋梁崩落事故を受けて、20年に道路所有者と合意した和解の最新提案(34億ユーロ)も考慮されている。決算の連結範囲には、Abertisが20年5月に買収したメキシコのRCO(Red de Carreteras de Occidente)グループ、同12月末に買収したERC(Elizabeth River Crossings)が含まれるが、スペインのAumarが保有していたコンセッションは19年末に失効している。
ASPIの親会社はAtlantiaから新会社ACCへ
なお、Atlantiaは20年7月に、ジェノバでの橋梁崩落事故の和解案として、ASPIのコンセッションに対する重大違反の申し立てを解決するためにイタリア政府に提出した提案のなかで、市場取引を介してASPIの支配権を譲渡する可能性を表明した。9月には、競争力のあるプロセスによるASPIの88.06%株式の完全売却と、新会社AutostradeConcessionieCostruzioni(ACC)を通じたASPI株式の部分的な分割と新会社の上場を目指して、株式処分のプロセスを開始した。
Atlantiaは2021年1月、ASPI株式の処分による分割計画を臨時総会で承認した。分割計画には次の取引が含まれている(図表2)。Atlantiaは7月末までに、イタリア預託貸付公庫(CDP)や他の投資家などから、ASPIの88.06%株式全体のオファーを受け取る必要がある。
- Atlantia保有のASPIの33.06%株式を新会社ACCに分割して、増資全額をAtlantiaの株主に割り当て
- Atlantia保有のASPIの残り55%株式を、ACCの62.77%株式と引き換えにACCに現物譲渡
- イタリア証券取引所が管轄する電子株式市場(MTA)へのACC株式の上場
図表2 ASPIの出資ストラクチャー