英国の電気料金

LRI Energy & Carbon Newsletterから

電気料金の推移

英国の一般的な世帯はエアコンはもっておらず、冬の暖房にはガスを使う。電気の年間平均使用量は1寝室、1-2人の世帯で1,800kWh、2-3寝室、2-3人の世帯で2,700kWh、4+寝室、4-5人の世帯で4,100kWhである[1]。独立規制当局のOfgemの平均的な世帯の定義は2-3寝室、2-3人の世帯であるが、彼らが支払う年間の電気代は2024年1月1日から3か月間の電気料金の法的上限価格を適用すると、964.8ポンド(186円/ポンドとすると179,000円)と計算される[2]。すなわち法的上限の単価は0.3573ポンド/kWh である(186円/ポンドとすると66.5円/kWh)。スウィッチングをしない限り、小売事業者はこの法的上限価格を適用する傾向にある。

因みに2022年度の日本の世帯当たりの年間電気消費量は4,175kWhで、113,000円を支払っている[3]。1kWh当たりの額は27.1円となる。平均世帯人員は2020年に2.49人であった[4]。それ以降値上がりしている筈であるが、2024年のデータはオンラインで見つからない。仮に50%値上がりしたとすれば40.7円となる。

英国の電気料金は天然ガス価格にリンクしている。2010年を100とした電気の価格インデックスは、市場が完全自由化された翌年の2000年の69.1から2003年の65.5へと、5.2%下がったが(その間ガスは5.3%低下)、その後、ガスが2003年の53.8から2004年に56.1、そして2009年に101.5へと大きく上がったため、電気の価格も2004年に67.6、そして2009年に104.1へと大きく上昇した[5]。

2000年からロシアによるウクライナ侵攻以前の2021年までの21年間の電気価格の名目(実質)上昇率は210%(100%)、そして2021年から2023年までの2年間の上昇率は69%(50%)であった。

料金の内訳

市場自由化以前からある大手電力会社の典型的な家庭用顧客が支払っている平均電気料金の内訳(%)は次の通りである(2021年8月、Ofgem)[6]。

  • 卸売コスト(仕入れ値):29.28%
  • ネットワークコスト:23.37%
  • 運用コスト(利益を含む):16.34%
  • 環境・社会賦課金:25.48%
  • VAT(消費税):4.76%
  • その他の直接コスト:2.09%

環境・社会賦課金は省エネ、エミッション削減、弱者救済のための政府施策のコストをカバーするための賦課金である。電気代に25.5%の率で加算される(ガス代には2.5%、デュアルフュエル代には15.3%)。対象となる施策には家庭の太陽光パネルからの余剰電気の買い取りや低所得者向け省エネ補助などが含まれている。税金の合計は30.24%である。炭素税(気候変動税)は発電用化石燃料に対して課されるため卸売コストに入っている。ガスに対するその税率は0.00775ポンド/kWh である。

因みに全需要家に対するネットワークコストのうち、送電システムの使用料金(TNUoS) そして配電システム使用料金(DUoS)は電気料金のそれぞれ7-10%そして12-15%を占める[7]。

日本の託送料金は概ね、英国のネットワークコストに該当すると理解できるが、その比率は家庭向け電気料金の3-4割程度である[8]。2015年における沖縄電力を除く大手電力の低圧の託送料金は7.81-9.71円/kWhであった[9]。

日本における賦課金は再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)である。それは3.49円/kWh(2024年度分)である。消費税が更にかかるが、電気代金にかかる税金は英国と比較して明らかに安い。 

英日の比較

ビッグマック指数[10]で英国の価格は日本の1.5倍くらいであるから、1kWhの両国における価格、66.5円と40.7円(推測)は両国の消費者にとって、実質、ほぼ同じくらいの負担価格と言える。ただし、税抜きでは英国の方が明らかに安い。日本はこれから本格的な炭素税が加わることになると理解している。より重要なことは、電気がどのくらいグリーンであるかと言うことである。英国は2035年までの電力グリッド完全脱炭素化を目指している。


[1] https://www.ofgem.gov.uk/average-gas-and-electricity-usage
[2] https://www.confused.com/gas-electricity/guides/average-energy-bills-in-the-uk
[3] https://www.env.go.jp/earth/ondanka/kateico2tokei/energy/detail/01/
[4] https://www.ipss.go.jp/pp-ajsetai/j/Hprj98/NL_gaiyo.html
[5] https://www.gov.uk/government/statistical-data-sets/monthly-domestic-energy-price-stastics
[6] https://www.ofgem.gov.uk/all-available-charts?sort=relevance
[7] https://electricitycosts.org.uk/electricity-bill-charges/
[8] https://www.cao.go.jp/consumer/content/20180105_20160726_takuso_toshin_betu_shiryou.pdf
[9] https://www.cao.go.jp/consumer/content/20180105_20160726_takuso_toshin_betu_shiryou.pdf
[10] https://www.economist.com/big-mac-index

津村照彦(LRI会長)
関連サイト
LRI ニュースレター エネルギー&カーボン
タイトルとURLをコピーしました