来年からSustainable Aviation Fuel (SAF) 使用の義務化始まる

LRI Energy & Carbon Newsletterから

英国政府は2030年までに全ての航空燃料の少なくとも10%はSAF(持続可能な航空燃料)とすることを義務づけることを決定した。議会の承認を得た後、来年の1月からこれを施行する[1]。つまり、来年から何らの義務が課せられることになる。

政府はこの決定に先駆けて、SAF100%の商業飛行実験に対して100万ポンド(2億円)の支援を行った。同実験の概要は次の通りである[2]。

Virgine Atlanticは昨年11月に SAFのみによる、ロンドン・ニューヨーク間の飛行に成功した。使用した機材はRolls-Royce のTrent 1000エンジンを積んだBoeing 787であった。使用したSAFはAirBP 社供給のHEFA (水素化処理エステル及び脂肪酸) 88%と、Marathon Petroleum Corporationの子会社である Virent供給のSAK (合成芳香族灯油) 12%のデュアルブレンドであった。HEFA は脂肪廃棄物から、そしてSAK は植物由来の糖から製造され、後者については残りの植物タンパク質、油、繊維は食品産業で使われる。SAK は、エンジン機能にとって不可欠な芳香族化合物を燃料に含ませるために 100% のSAF ブレンドには必要である。

もう一つの英国の航空会社であるBritish Airwaysの親会社IAGは今年2月にカリフォルニア州のe-SAFの製造会社であるTwelveとe-SAFの調達契約を締結した[3]。同契約のもとIAGは早ければ来年から14年間にわたり、毎年785,000トンのe-SAFの供給を受ける。これにより同社の欧州子会社5社がSAF10%のために必要とする量の1/3を満たすことができる。e-SAFは再生可能エネルギー電気とCO2からつくる合成燃料である。IAGは既に2030年までのSAF10%、そして2050年までのネットゼロを公約としている。昨年7月には、英国のTeessideにあるクリーンテック企業で特殊なプロセスを使ってバイオ燃料を製造するNovea Pangaeaに投資することを発表している。

気になるSAFの生産量であるが、International Air Transport Association (IATA) は次のように述べている[4]。

2023年の生産量は6億リットル(50万トン)を超え、2022年の生産量の2倍に達した。SAFは生産された再生可能燃料全体の3%を占めた。2024 年には3 倍の 18 億 7,500 万リットル (150 万トン) に増加すると予想されており、それは航空燃料需要の 0.53%、そして再生可能燃料全体の 6% を占めるであろう。 再生可能燃料全体に占める SAF の割合が引き続き低い理由は、主に 2023 年に稼働する新しい生産能力が、他の再生可能燃料に割り当てられているからである。

このため SAF 価格は高く維持される。航空業界はSAF用として再生可能燃料生産能力全体の 25% から 30%を必要としている。このレベルを確保できれば、航空部門は 2050 年までにネットゼロを達成するために必要な軌道に乗るであろう。

SAFに対する投資家の関心は高い。英国の先駆的なSAF10%の義務化はその関心を更に高めるであろう。Virgin Atlanticは、SAF10%は英国経済に18億ポンドの粗付加価値と1万件の雇用をもたらすであろうと述べている[5]。SAFを使用することにより、従来のジェット燃料と比較して、ライフサイクル勘定でCO2エミッションを最大70%削減できる。パフォーマンスに違いはない。課題はフィードストックの持続性のある調達である。そのためには過去の様々な経験から学んで得た戦略が必要となる。

 

※この記事は、英国のロンドンリサーチインターナショナル(LRI)の許可を得て、LRI Energy &
Carbon Newsletterから転載しました。同社のコンテンツは下記関連サイトからご覧になれます。

—————————————————————————–
[1] https://www.gov.uk/government/news/aviation-fuel-plan-supports-growth-of-british-aviation-sector
[2] https://corporate.virginatlantic.com/gb/en/media/press-releases/worlds-first-sustainable-aviation-fuel-flight.html 
[3] https://www.cityam.com/iag-british-airways-owner-signs-biggest-ever-deal-for-sustainable-aviation-fuel/
[4] https://www.iata.org/en/pressroom/2023-releases/2023-12-06-02/#:~:text=Geneva%20%E2%80%93%20The%20International%20Air%20Transport,0.25%20Mt)%20produced%20in%202022 
[5] https://corporate.virginatlantic.com/gb/en/media/press-releases/worlds-first-sustainable-aviation-fuel-flight.html

津村照彦(LRI会長)
関連サイト
LRI ニュースレター エネルギー&カーボン
タイトルとURLをコピーしました