InfraBizが1年間に収集・蓄積したインフラ投資ビジネスに関する情報は1300件を超える。この中から「2022年の注目ニュース」を紹介する。
政府がPFI抜本強化策
岸田文雄首相は就任当初からPFI抜本強化を掲げ、2022年の施政方針演説ではコンセッション方式のいっそうの活用を促した。「PPP/PFI推進アクションプラン(令和4年改定版)」は「10年間で事業規模30兆円」の新たな目標を設定。民間インフラ投資市場を早期に形成する必要があるとの認識は、国会の内閣委員会でも共有された。
等々力緑地再編整備・運営PFI、提案者の東急コンソーシアムが落札
三浦市公共下水道、新秩父宮ラグビー場など、いくつかのコンセッション事業が案件化された。InfraBizが特に注目したのは、事業費577億円、期間30年の等々力緑地再編整備・運営事業だ。2019年にPFI法第6条に基づく民間提案を行った東急のコンソーシアムが、公募を経て選ばれた。
コンセッション事業も投資対象としたインフラファンド
グローバル・インフラ・マネジメントは、コンセッション事業も投資対象とするインフラファンドを立ち上げた。同社の出資者は、コンセッション事業に多くの実績を持つ東急とインフロニア・ホールディングスだ。日本ではほとんどなかったPFI事業のセカンダリー取引が、始まるかもしれない。
99年間のコンセッション事業「米シカゴスカイウェイ」が2回目の取引
海外のセカンダリーマーケットは依然として活発だ。それを象徴したのが、99年間のコンセッション契約に基づく、7.8マイル (12.5km) の有料道路シカゴスカイウェイ(米国イリノイ州)の取引だ。豪Atlas Arteriaが、運営会社Skyway Concession Companyの66.67%株式を、同社に出資していたカナダの年金基金から20.13億米ドルで取得した。
秋田洋上風力発電の能代港20基が商業運転開始
丸紅などが出資する秋田洋上風力発電が開発・運営する、秋田港及び能代港における着床式洋上風力発電プロジェクト(約140MW)のうち、能代港の風車20基、84MWが商業運転を開始した。大規模な商用洋上風力発電事業としては日本初。洋上風力発電時代の到来を告げる出来事だ。
洋上風力発電の事業者選定ルール見直し
経済産業省と国土交通省は、再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電の事業者選定ルールを、運転開始時期や電力安定供給を高く評価する方向で見直した。これに沿って、2022年12月に4海域で事業者の公募を開始した。2021年12月の入札で、三菱商事を中心とするグループが3海域を独占。事業者選定のあり方をめぐり論争が起きていた。
通信基地局インフラシェアリング事業に参入相次ぐ
5Gネットワークの全国普及を目指す「デジタル田園都市国家構想」が、デジタルインフラの整備を促している。普及策の柱と目されるのが、通信基地局を複数の通信事業者で共用するインフラシェアリングだ。通信基地局が“稼げるアセット”であることは海外で実証済み。国内ではJTOWERが先行するこの市場に、他企業の参入が相次いだ。
太陽光発電の供給場所は公共施設へ
東京都は新たな環境基本計画で、全都有施設に可能な限り太陽光発電設備を設置する方針を打ち出した。大規模な太陽光発電のための用地がほとんど残されていない状況下で、供給場所は公共施設や公共用地に移る。屋上、公園、道路関連施設などが次なるターゲットだ。他の自治体でも同様の動きが起きつつある。
非FIT太陽光発電ビジネスの台頭
これまで国内インフラ投資の対象は、ほとんどがFIT(固定価格買取制度)の太陽光発電設備だった。2022年は、非FIT太陽光発電ビジネスの幕が開けた年ともいえる。市場での売電価格に一定の補助額(プレミアム)を上乗せするFIP制度を活用した太陽光発電所を組み入れるファンドが複数登場。FITの発電所をFIPに変更する取り組みも見られた。
上場インフラファンド2銘柄の上場廃止
非上場のインフラファンド市場が拡大し、投資対象も多様化する中で、FITの太陽光発電設備を主な投資対象とする上場インフラファンド市場は縮小した。上場7銘柄のうち、日本再生可能エネルギーインフラ投資法人とタカラレーベン・インフラ投資法人の2銘柄が、上場廃止に追い込まれた。スポンサー企業によるTOB(株式公開買付)が成立したことが理由だ。上場から5~6年での消滅である。
「2022年の注目ニュース」の詳細は、「インフラビジネスレポート2023」(日経BP)でご覧ください。洋上風力発電事業やPFI/コンセッション事業の最新動向など、インフラ投資・運営ビジネスの市場展望や戦略立案に必要な情報を収録しました。