フランスの総合インフラサービス事業会社VINCIの2021年売上高は494億ユーロ(6兆4000億円、2020年比14%増、2019年比3%増)。新型コロナ感染症(COVID-19)パンデミック前の2019年の売上高を上回り、過去最高となった。EBIT(利払い・税引き前利益=営業利益)は47億ユーロ。2020年(29億ユーロ)を上回っているが、空港部門の貢献が少なかったため、2019年(57億ユーロ)は下回った。EBITの対売上高比率は9.6%。連結純利益は26億ユーロ(2020年比109%増、2019年比20%減)だった(図表1)。
図表1■VINCIの過去3年の決算
同社の事業は、コンセッション、エネルギー、建設、不動産の4部門に分けられている。このうち、コンセッション部門とエネルギー部門の2021年実績について、図表2に示す2021年の各部門の実績、図表3に示す事業部門別売上高・営業利益の推移(2019~21年)を参照しながら概観する。
図表2■VINCIの事業部門別の売上高・営業利益(2021年)
図表3■VINCIの事業部門別売上高・営業利益の推移(2019~21年)
道路は回復、空港は関空含めて依然低迷
VINCIのコンセッション部門は、4443kmの国内道路を運営するVINCI Autoroutes、12カ国・45空港を運営・管理するVINCI Airports、その他の子会社(国外道路運営のVINCI Highways、鉄道運営のVINCI Railways、スタジアム運営のVINCI Stadium)からなる。2021年の部門売上高は70億ユーロ(2020年比21%増、2019年比18%減)。EBITは27億ユーロ(2020年比69%増、2019年比33%減)。EBITの対売上高比率は38.1%で、2020年に比べて回復した(同年比40%増)。
道路部門のVINCI Autoroutesの売上高は56億ユーロで、2019年(56億ユーロ)の水準に近づいた。EBIT(28億ユーロ)は2019年並み。全体交通量は2020年比22%増と回復し、2019年の水準(同年比4%減)に迫った(図表4)。フランス国内の堅調な経済活動とEC(電子商取引)の伸長によって、大型車は2019年比3%増、小型乗用車は下半期に急速に回復し、2019年比5%減にとどまった。2022年の交通量は2019年を超えると予想されている。
図表4■小型乗用車 (LV)と大型車(HV)の2020~21年交通量の2019年との増減比較
一方、空港部門のVINCI Airportsの売上高は12億ユーロ(2020年比20%増、2019年比55%減)。大幅なコスト削減の結果、2021年下半期にEBITレベルで利益を取り戻し、通年の損失を2億ユーロにとどめた。2021年の乗客数は8582万人(2020年比12%増、2019年比66%減)。全体的に2020年からは回復傾向にあるものの、英国とアジア(日本とカンボジア)の回復は弱いままだった(図表5)。公衆衛生状況が再び悪化しない限り、乗客数の増加が続くと予想されており、2022年は2019年の約60%に達する見込み。これによって、売上高が損益分岐点に近づく可能性がある。
図表5■2021年旅客数の2020、2019年との増減比較
買収したエネルギー子会社の2022年予想売上高は55億ユーロ
エネルギー部門のVINCI Energiesの売上高は151億ユーロ(2020年比11%増)。2021年末の供給不足にもかかわらず、活気ある市場で成長を維持している。フランス国内の経済環境は良好で、売上高67億ユーロ(全体の44%)。国外は売上高84億ユーロ(同56%)。特に欧州、北米、アフリカで売り上げが増加した。全体のEBITは9.85億ユーロ、対売上高比6.5%で、2019年(6.0%)を上回る。
2021年末にスペインACSグループからの買収を完了したエネルギー事業子会社Cobra ISは、売上高よりも利益率に重点を置いており、2022年に55億ユーロの売上高、業界最高水準の利益率を達成すると見込む。買収によって、ターンキーEPC(エンジニアリング・調達・建設)プロジェクトのほか、数ギガワットの潜在的な洋上風力プロジェクトに太陽光と陸上風力を合わせて、約15GWの総発電容量に相当する短期・中期の事業機会も獲得している。