東京都府中市(人口約26万人)が、市内を3工区に分けて発注する道路等包括管理事業は、前田道路グループと、地元の冨士土木、宮光グループの3者が選ばれた。期間は2021年4月~24年3月までの3年間。5事業者が6工区に応募した。
道路等包括管理事業では、舗装の補修や街路樹剪定などの異なる業務を、一括して複数年度契約で事業者に委託する。性能発注を取り入れることで事業者のノウハウが生かされ、市民サービスの向上と管理経費の削減につながることを見込んでいる。これまでの試験的な取り組みで効果が認められたことから、今回の本格運用となった。
最も規模が大きい東地区は、面積1341ha、市道延長約182km。前田道路・スバル興業・第一造園・武蔵造園・前田建設工業・日本工営共同企業体が選定された。契約金額は単年度で総価契約が1億9965万円、単価契約の道路維持・工事と街路樹が、それぞれ約1720万円と約453万円だ。
事業の規模や期間を決めるに際して、市は市内・市外の事業者を対象にアンケート調査を実施した。この結果を踏まえて、事業規模は年間1億円程度を確保する前提で、1億円規模を2工区、2億円規模を1工区とした。1工区を希望する回答は、全体の4%に過ぎなかった。市が当初5年と想定した期間は、市内事業者の多数意見を考慮するとともに、社会情勢変化や物価変動などのリスクを避け、市内事業者の参画の機会を促すために3年とした。
試験的導入で効果を確認
府中市の取り組みは2011年度に国土交通省の先導的官民連携事業に採択され、以来、検証を重ねてきた。その経緯は、「府中市道路等包括管理事業運用方針」に詳しい。2018年4月~21年3月に北西地区で試行した道路等包括管理では、維持管理に関する市民からの要望相談件数が、試行前に比べて3割以上減少した。道路の損傷やごみの散乱を市民が発見して連絡する前に、受注者が巡回して対処できたことを理由に挙げている。
管理経費は、従来方式だった16年度の9981万円から、包括管理後の9720万円へと約261万円(2.6%)減った。微減だが、要望相談事項が減っていることから、サービス水準は向上したとみている。
さらに、市職員への聞き取りでは、「委託業者への発注業務と支払い業務の件数が大幅に削減できた」「舗装や清掃、植栽管理など、従来別々だった複数の委託が一つにまとめられた」「現地の状況を確認し、作業の手法を検討する手間と時間が削減できた」など、負担の軽減が認められた。
受注者は、年間の契約金額が1億円規模になるため、専任の業務統括責任者を配置いやすくなる。性能発注を導入した結果、市の求める水準を満たしたうえで安全性に問題がなければ作業を見送る、作業の質に影響のない範囲で安い資材を使うなどの工夫ができ、採算性の確保にもつながった。