石破茂首相の所信表明、インフラ分野への影響は?

石破茂首相は10月4日の所信表明演説で「地方こそ成長の主役」と唱え、地方創生交付金を当初予算ベースで倍増する方針を示した。地方創生のための施策を「地方創生2.0」として再起動する考えだ。少子高齢化や人口減少に対応するため、デジタル田園都市国家構想実現会議を発展させ、「新しい地方経済・生活環境創生本部」を創設する。

防災・減災、国土強靱化の取り組みも推進する。事前防災の徹底を掲げ、内閣府防災担当の予算・人員を抜本的に強化するとともに、防災庁の設置に向けた準備を進める。具体的対応策として避難所の拡充を挙げた。発災後、速やかにトイレ、キッチンカー、ベッド・風呂を配備できるような体制を構築する。

原子力発電の利用を含めた脱炭素化や省エネルギー化によって、エネルギー自給率を抜本的に高める方針も示した。「資産運用立国」の政策も引き継ぐ。

石破首相は、これまでの国会答弁や著作で藻谷浩介氏(日本総合研究所主席研究員)の「里山資本主義」に言及し、「日本社会のシステムとして検討すべき」と評価してきた。地域におけるエネルギーや食料の自給率を高め、地域内の経済循環や持続性を促す考えを支持している。

PPP/PFIに関する発言は多くないが、「経済を活性化する極めて重要な手法」「積極的に導入することによって、地方の仕事の質を変えたい」という答弁がある。官民ファンドについては、民業圧迫にならないことを前提に、民間資金の呼び水として地域産業の発展に活用されるべきとの意見だ。

人口あたりの日本のシェルター普及率が主要国に比べて著しく低いことも繰り返し指摘している。空襲を受けた際の備えとして、トイレ、食料、医薬品、換気装置などを備えたシェルター設置を急ぐよう求めてきた。

 

考察:所信表明時点で想定できるインフラビジネスへの影響

  • グリーン/エネルギー、デジタル、PPP/PFI/コンセッションの基本的な政策の方向性に、大きな変更は見られない。
  • 官民連携事業では、地方創生交付金の目的に沿うような、地域の自主性・主体性を生かした先導的な民間提案が求められる。特に、地域産業の持続可能性が重視される。
  • 環境省が主導する「脱炭素先行地域」は、地域の課題解決と脱炭素を同時実現、地方創生への貢献、先進性を要件とし、民間事業者などとの共同提案を必須としており、石破首相の目指す地方創生のイメージに近い。
  • 所信表明で触れた「デジタル田園都市国家構想」は、地方の社会課題解決の手段としてデジタルライフライン全国総合整備計画を位置づけている。早期実装3分野である自動運転支援道、ドローン航路、インフラ管理DXの追い風となる。
  • 政府の「資産運用立国実現プラン」は運用対象の多様化を掲げている。これに伴って、運用先である地域インフラ事業の注目度が高まる。
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