廃熱の更なる利用はネットゼロエミッション達成のための重要なコンポーネントである。データセンターでは多量の電気が消費され、そこには廃熱がある。同様に、水素製造プラントでも、それがグリーンであろうがブルーであろうが、多量の廃熱ができる。その量は、英国の場合、同国の水素戦略に沿って2050年までに最終エネルギー消費量の20-35%(250-460TWh)を水素で賄うとすれば、国内で必要な熱需要の最大27%を満たすことができる量である。それは全世帯の暖房に必要な熱量の1.3倍である[1]。
この水素製造時の廃熱の話は数年前にデンマークから始まり、ますます注目を浴びつつある。廃熱利用を織り込むことにより、水素製造プロジェクトの財務的な実行可能性を高めることができる。
英国ではヒートネットワーク(地域冷暖房)が、建物の暖房のエネルギー転換の最優先ソリューションである。ヒートネットワークに接続できれば、個別にヒートポンプを設置・運用するよりもずっと安い。英国の脱炭素エネルギーシステムの最小コストシナリオではヒートネットワークに接続される世帯数の比率として20%という仮説が使われたりしている。これらのヒートネットワークの燃料は化石燃料ではなく、ヒートポンプ熱(地中熱、川の水を利用する実証もあり)、産業からの廃熱、そしてバイオマスである。脚光を浴びる水素製造時の廃熱が、その20%という仮の数値に織り込まれているかは不明であるが、上述したようにその量は、全世帯の暖房に必要な熱量の最大1.3倍と豊富である。
英国ではCCUSプロジェクトが近いうちに実施に移されるが、それらのプロジェクトには水素製造プラントの建設が含まれている。プロジェクトでは二酸化炭素と水素のパイプラインが敷設されることが決まっているが、当然ながら水素製造プラントの廃熱を利用したヒートネットワークも同時に建設されるであろう。CCUSプロジェクトは産業集積に留まらず、住宅を含む脱炭素時代の地域計画の可能性を含んでいる。
水素製造システムの設計・開発に当たっては、廃熱利用の発電設備を合わせた複合エネルギーシステムを目指すことも一案である。
※この記事は、英国のロンドンリサーチインターナショナル(LRI)の許可を得て、LRI Energy &
Carbon Newsletterから転載しました。同社のコンテンツは下記関連サイトからご覧になれます。
[1] https://storbritannien.um.dk/en/the-trade-council/projects/district-heating/heat-recovery-from-hydrogen-production