スペインのインフラ総合会社ACS Groupの売上高は349億3700万ユーロ(前年比10.5%減)、EBITDA(利息・税金・減価償却前利益)は23億9700万ユーロ(同23.9%減)、純利益(非経常的影響を除いた調整後)は5億7400万ユーロ(同40.3%減)となった(図表1)。
ACS Groupの事業は、インフラ事業(建設事業の子会社にDragadosとドイツHOCHTIEF、コンセッション事業の子会社にIridiumとAbertis)、電力・エネルギー施設・モビリティ等の産業サービス事業(子会社にACS Servicios Comunicaciones y Energía)、施設のファシリティ・マネジメント(FM)のサービス事業(子会社にClece)に大別できる。2020年決算では、いずれもCOVID-19の影響を大きく受けた。特にコンセッション事業で、子会社Abertisによる貢献が大幅に落ち込んだため、純利益が前年の2億5500万ユーロから、20年は−100万ユーロに激減した(図表2)。
図表1 2020年の決算概要
図表2 事業別の収益状況
子会社Abertisはメキシコ、米国でコンセッション会社の株式取得
ACSのコンセッション事業は、100%出資の子会社Iridiumによる事業と、30%を出資する多国籍の道路運営会社Abertis(ACSが50.4%出資するHOCHTIEFもAbertisに20%出資)からの貢献に大別される。2020年の損益は、スペイン、フランスでの売上比率が大きいAbertisの大幅な売上高減少の影響を受けて、100万ユーロの損失(前年は2億5500万ユーロの利益)となっている。
スペイン、フランス、ブラジル、チリをはじめ、15カ国で8600km超の有料道路を管理するAbertisの2020年のパフォーマンスは低調だった。売上高は40億5400万ユーロ(前年比24%減)、EBITDA 26億2800万ユーロ(同30%減)、純利益3億6500万ユーロ(同66%減)。ACSグループの純利益に対するAbertisの貢献は−3450万ユーロで、そのうちの−2560万ユーロはACSの30%の直接出資分に相当し、残り−890万ユーロはHOCHTIEFを通じた間接出資分に相当する(図表3)。Abertisの減収減益の要因は、各国の封鎖と移動制限によるもので、3月中旬以降、第2四半期(Q2)にかけて交通量が急減し、通年の1日平均交通量は前年比21%減だった(図表4)。
一方、Abertisは20年6月、メキシコ最大の道路事業者の一つであるRed de Carreteras de Occidente(RCO)の株式76%をGoldman Sachs Infrastructure Partners(GSIP)から取得した。RCOの株式53%に14億7700万ユーロを投じた(残りはシンガポールの投資会社GIC)。さらに12月には、Abertis とManulife Investment Managementが、米国バージニア州のElizabeth River Crossings(ERC)の全株式を「Macquarie Infrastructure Partners II+Skanska」から取得。AbertisはERCの株式55.2%に約10億ユーロを投じた(残り44.8%はManulife Investment Managementが取得)。コンセッションの残存期間は2070年4月までだ。
Iridiumは、スペインで6つのシャドートール・コンセッションの全株式を保有していた持ち株会社の株式74%の売却を2020年上半期に完了した。現在、コンセッション会社の株式26%を保有するとともに、これら資産の管理・運営は継続している。
図表3 コンセッション事業の内訳
図表4 Abertisが運営する道路の各月交通量の前年比較